【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

内縁の夫から受け取ったお金は生活費等の贈与か婚姻費用分担義務履行分か?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、内縁の夫から受け取っていたお金に関する判決事例について、お話します。

出典:TAINS(Z888-2734)(一部抜粋加工)
令和6年12月12日判決


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婚姻費用とは?

法テラスHP(一部抜粋)
婚姻費用とは、婚姻中において、夫婦と未成熟の子が通常の社会生活を維持するために必要な生活費のことです。具体的には、衣食住に必要な経費、教育費、医療費などがこれに含まれます。
夫婦は互いに扶養義務を負っています。また、親は未成熟の子に対して扶養義務を負っています。そのため、夫または妻は、他方の配偶者に対して、自分と子の生活費の分担を求めることができます。

婚姻費用とは、ご夫婦や経済的にまだ自立していない子の生活に必要な費用のことです。

民法(一部抜粋)
(婚姻費用の分担)
第七百六十条 夫婦は、その資産、収入その他一切の事情を考慮して、婚姻から生ずる費用を分担する。

婚姻費用を支払うのは「義務」であり、「贈与」ではありません。

離婚調停中であったり、別居していたりしても、婚姻費用を支払う義務があります。

「あげます」「もらいます」がないと成立しない(下記にあるとおり、「贈与」はそういうことになっています)、というような話ではありません。

民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

想う相続税理士

内縁関係についても、法律婚と同様に婚姻費用分担義務規定(上記の民法760条)が準用されます。

婚姻費用が過大な場合には贈与税が課税される?

上記でお話したとおり、婚姻費用の支払は「義務」に基づくものであり、「贈与」ではありません。

婚姻費用は、「贈与税が非課税」なのではなく、「贈与税の課税対象外」なのです。

婚姻費用に贈与税が課税されるとすれば、それは「婚姻費用ではなく贈与」であり、その上で、下記の「贈与税の非課税財産に該当しない(つまり課税財産)」ということが要件となります。

相続税法(一部抜粋)
第21条の3 贈与税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、贈与税の課税価格に算入しない。
二 扶養義務者相互間において生活費又は教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの

今回の判決でも、税務署側は次のように主張しています。

本件各金員の交付は、婚姻費用の分担としてされたものであったと認めることはできず、贈与に該当する。

贈与に該当すれば、贈与税を課税できる可能性がある、ということです。

また、その上で「贈与税の非課税財産に該当しない(つまり課税財産)」旨を主張しています。

■■■からの本件各預金口座への各入金には定期性及び定額性がなく、各入金があった時期に当該入金をした理由も不明であるし、控訴人の各支出も直ちに通常の生活費等とはいい難い使途に対応する出金が多額に上っているから、控訴人の生活費等としてその都度与えられていたものとはいえない

この辺りは、大変参考になる記述だと思われます。

想う相続税理士秘書

財産が多ければ婚姻費用の支払が多額でも問題ないと判断された

当該夫婦の収入や資産等によって定まる暮らし振りに応じて広い内容を持ち得る。そして、婚姻費用の具体的内容は、基本的には夫婦間の合意によって決せられることからすれば、夫婦の収入、資産状態等によって規定される生活の程度や状態に応じて、当該合意に基づいて個別にその該当性を判断するのが相当

一般的な婚姻費用分担額として非常に高額であることは否めない

その資産規模に照らせば、全体として、甲と控訴人との合意に基づく婚姻費用分担義務の履行の範囲内の金員であると捉えられ得る

多額の資産を有する甲から収入のない控訴人に対する婚姻費用分担の合意に基づく義務の履行として不相当に過大である又は目的外で給付がされたものと認めることはできない

財産が多ければ、支払額が多額でも、使途が妥当で、実際に使われていれば問題ない、と判断されました。

想う相続税理士

財産が多ければ(多額の婚姻費用を支払うことができるのであれば)、質素な暮らしぶりをしなくてもいい、そこに「一般的な金額」との比較は不要(支払金額が多額だからといって不相当に高額だとは言えない)、ということです。