【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続争いで「和解」したら必ず更正の請求をすることができる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産をめぐる訴訟で成立した「和解」を理由に、相続税の更正の請求ができるかどうかが争われた判決事例について、お話します。

出典:TAINS(Z262-11955)(一部抜粋加工)
平成24年5月24日判決


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和解内容を実態に合わせて解釈し直すことができる?

本件は、相続財産に関する訴訟で「和解」が成立したことで相続財産に変動が生じたとして、相続税について更正の請求をしたものの、税務署から「更正をすべき理由がない旨の通知」を受け、その取消しを求めた事案です。

この事件の背景には、不動産の帰属をめぐる親族間の争いがあり、当事者間で「死因贈与契約の無効」や、「その後の解決金(慰謝料趣旨の支払)」などが和解条項として整理されていました。

納税者側は、実質的には不動産(または売却代金)の一部は相手方が取得しているのだから、自分たちに全部について課税されるのは不公平だ、という感覚を強く主張しています。

その上で、和解によって相続財産の前提が変わった以上、相続税の申告も「やり直せる(更正の請求ができる)」はずだ、という構図で争われました。

和解調書は確定判決と同一の効力を有する

この判決で重要なのは、国税通則法第23条第2項第1号の「判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)」が、何でもかんでも更正の請求を可能にする「万能カード」ではない、と整理した点です。

原審(Z261-11752・平成23年9月8日判決)では、次のように述べられています。

国税通則法23条2項1号の「判決(判決と同一の効力を有する和解その他の行為を含む。)」(以下「判決等」という。)とは、納税者において、申告時又はその後の同条1項所定の期間内に適切に権利の主張ができなかったことにやむを得ない事情があると評価できるものでなければならず、結局、申告時において、申告に係る税額計算の基礎となった権利関係が明確になっていなかったような場合に、その後の訴訟による判決等の結果、権利関係が明確になり、申告時に前提とした権利関係と異なった権利関係が納税義務の成立当時に遡って確定したといった場合の判決等に限られると解すべきである(原審判決引用)

つまり、後から和解や判決が出たという「形式」だけでは足りず、申告時点で権利関係が明確ではなかったこと等により、適切な主張ができなかったことについて「やむを得ない事情」があると評価できる場面に限る、という方向性です。

さらに本件では、和解条項に書かれている内容を、当事者の後日の言い分で都合よく読み替えることには慎重であるべき、という判断枠組みも強調されています。

和解は、争いがある中で互譲して紛争解決を図るものであり、原則として、和解条項で確認・確定した範囲を離れて解釈できない、という整理です。

そして本件では、和解調書の文言自体が矛盾している等の「特別の事情」があるとはいえないとして、納税者側の「実質はこうだ」という主張は採用できない、と結論づけています。

和解調書の効力は極めて大きい

この判決事例から、相続の現場でまず意識したいのは、「和解で解決した」という事実そのものより、和解条項で「何が確定したのか」が税務上の出発点になる、という点です。

また、相続開始後に分筆や持分移転のような動きがあったとしても、それが直ちに、過去の課税処分(本件では「更正をすべき理由がない旨の通知」)の適法性を左右するとは限らない、という点も押さえどころです。

更正の請求を検討する場面では、和解(または判決等)があったことを示すだけでなく、申告時点で権利関係が不明確であったこと、そしてそのために適切な権利主張ができなかったことについて、どこに「やむを得ない事情」があるのかを、事実関係に即して整理していく必要があります。

相続は、感情の対立が強く、解決のために「落としどころ」として和解を選ぶことも多い分野です。

しかし税務は、「落としどころ」よりも「確定した法律関係(和解条項の文言)」に引きずられる場面があり、ここを見誤ると「解決したはずなのに税金だけ置いてけぼり」という違和感が残りやすくなります。

そのため、相続財産が争いになっていて訴訟・和解の可能性がある場合は、税務の見立ても含めて、和解条項の作り方・表現の置き方を早めに意識することが重要になります。

想う相続税理士

現実的には(経験的には)、税務のことまで考えてやっていられない、という場合もあると思います。

税務の話を出したらまとまらなくなる、という場合もあると思います。

「何を優先するか?」をきちんと決めましょう。