【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続時精算課税選択届出書の提出は生前贈与加算を引き起こす

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税贈与により財産を取得した場合の注意点について、お話します。


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暦年課税贈与により相続税対策をしても相続税がかかる場合がある

「将来発生する相続税を減らしたい(相続税対策をしたい)」と思った場合、「財産が多いから相続税も高くなるんじゃないか。じゃあ、亡くなる前に贈与してしまえばいいじゃないか」と考えて、ガンガン多額の贈与をすると、贈与税がかかります。

そこで、一般的な贈与である暦年課税贈与により、毎年110万円の暦年課税贈与をするとします。

暦年課税贈与の基礎控除額(非課税枠)は年間110万円なので、これなら贈与税がかかりません。

父Aさんが長男Bさんに今年から毎年110万円ずつ暦年課税贈与をしたとします。

長男Bさんが6年間(R7・R8・R9・R10・R11・R12)、各年の秋に110万円×6回=660万円の贈与を受け、最後の贈与の年(R12)の2年後(R14)の春に、父Aさんが亡くなったとします。

この父Aさんの相続で、長男Bさんは遺産分割協議により、相続人である二男Cさんと、父Aさんの相続財産を半分ずつ相続したとします。

この場合、660万円△100万円=560万円の贈与財産は、相続税の課税対象になります。

相続税がかからないように贈与をしても、生前贈与加算の規定により、相続税がかかってしまうのです。

長男Bさんが相続で財産を取得したためです。

相続税法(一部抜粋)
第19条 相続開始前7年以内に贈与があつた場合の相続税額
相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続の開始前7年以内に当該相続に係る被相続人から贈与により財産を取得したことがある場合においては、その者については、当該贈与により取得した財産の価額を相続税の課税価格に加算した価額を相続税の課税価格とみなし、

相続で財産を取得しなくても相続税がかかる場合がある

父Aさんの相続で、長男Bさんが財産を全く相続しない(遺産分割協議は二男Cさんが全財産を相続する内容で決定、遺言でももちろん財産を取得せず、また、死亡保険金も受け取っていない)という場合には、上記の生前贈与加算(560万円が相続税の課税対象になること)は絶対にないか、というと、そんなことはありません。

相続税法(一部抜粋加工)
第21条の16
特定贈与者から相続又は遺贈により財産を取得しなかつた相続時精算課税適用者については、当該特定贈与者からの贈与により取得した財産で第21条の9第3項の規定の適用を受けるものを当該特定贈与者から相続(当該相続時精算課税適用者が当該特定贈与者の相続人以外の者である場合には、遺贈)により取得したものとみなして第1節の規定を適用する。

長男Bさんが「相続時精算課税適用者」に該当すると、相続で財産を取得していなくても、生前贈与加算の対象となるのです。

相続時精算課税適用者とは?

相続税法(一部抜粋加工)
第三節 相続時精算課税
第21条の9 相続時精算課税の選択
2 前項の規定の適用を受けようとする者は、政令で定めるところにより、第28条第1項の期間内に前項に規定する贈与をした者からのその年中における贈与により取得した財産について同項の規定の適用を受けようとする旨その他財務省令で定める事項を記載した届出書を納税地の所轄税務署長に提出しなければならない。
5 第2項の届出書を提出した者(以下「相続時精算課税適用者」という。)が、

「相続時精算課税選択届出書を提出した者」は、生前贈与加算の対象者となります。

長男Bさんが、R13に父Aさんから110万円の贈与を受け、その贈与について、相続時精算課税選択届出書をR14.3.15に提出している場合、長男Bさんは「相続時精算課税適用者」となりますので、上記の560万円は相続税の課税対象となります。

想う相続税理士

上記の相続税法第21条の16にあるとおり、相続時精算課税贈与財産は、相続で(相続または遺贈により)取得したものとして取り扱われますので、亡くなった時に相続財産を取得しなくても、生前贈与加算が適用されますので、ご注意を。