相続税専門税理士の富山です。
今回は、代襲相続人の方が相続放棄をした場合の相続税額の2割加算について、国税庁HPの質疑応答事例の内容を元に、お話します。
代襲相続人とは?
民法(一部抜粋加工)
(子及びその代襲者等の相続権)
第八百八十七条 被相続人の子は、相続人となる。
2 被相続人の子が、相続の開始以前に死亡したとき、又は第八百九十一条(相続人の欠格事由)の規定に該当し、若しくは廃除によって、その相続権を失ったときは、その者の子がこれを代襲して相続人となる。
親が亡くなった場合、「子」がいれば、「子」は第1順位の相続人になります。
ただし、その「子」が、親が亡くなる以前に亡くなっていたら、どうなるのでしょうか?
その場合には、その「子」の子供、つまり、親から見た「孫」が「代襲相続人」として相続人になります。
相続税額の2割加算とは?
相続税法(一部抜粋加工)
第18条 相続税額の加算
相続又は遺贈により財産を取得した者が当該相続又は遺贈に係る被相続人の一親等の血族(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)及び配偶者以外の者である場合においては、その者に係る相続税額は、前条の規定にかかわらず、同条の規定により算出した金額にその100分の20に相当する金額を加算した金額とする。
相続税は、一定の方については、2割増しで計算されます。
この2割増し課税の対象となる方は、「亡くなった方の『一親等の血族及び配偶者』以外の方」です。
ただし、一親等の血族ではなくても、一親等の血族として取り扱われる、つまり、2割増し課税の対象とならない場合があります。
それは、上記のカッコ書きの部分(「当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。」)に該当する場合です。
最初にご説明した「代襲相続人(代襲して相続人となった)」が出てきています。
「子」が先に亡くなっている場合の「孫」であれば、2割増し課税の対象にならない、ということなのでしょうか?
代襲相続人が相続放棄をすると2割増し課税の対象になる
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
相続を放棄した代襲相続人に遺贈財産がある場合の相続税の2割加算
【照会要旨】
代襲相続人の地位にある者が相続を放棄しましたが、遺贈による財産取得があるため相続税が課されます。この場合、相続税法第18条((相続税額の加算))の規定は適用されますか。
【回答要旨】
相続税法第18条かっこ書によれば、「当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、……相続人となった当該被相続人の直系卑属」とされており、ここでいう「相続人」には相続を放棄した者は含まれませんから、被相続人の代襲相続人となる直系卑属が相続を放棄した場合には、同条の規定の適用があることになります。
「子」が亡くなると、孫は自動的に「代襲相続人」になります。
つまり、相続人になるのです。
しかし、相続放棄をするとどうなるでしょうか?
民法(一部抜粋加工)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。
「初めから相続人とならなかったものとみなす」ですから、「『相続人であった時期があったかもしれないけど』『いったんは相続人になったかもしれないけど』相続人ではない人」になるのです。
相続人だった時期があった、一度は相続人になった、「そんな過去は消されてしまう」のです。
ここで、相続税法第18条のカッコ書きをもう一度確認してみると、
(当該被相続人の直系卑属が相続開始以前に死亡し、又は相続権を失つたため、代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属を含む。)
となっています。
直系卑属(孫)であったとしても、「相続人となつた」過去は消されてしまう為、「代襲して相続人となつた当該被相続人の直系卑属」に該当せず、相続税の2割増し課税の対象になってしまうのです。
想う相続税理士秘書
想う相続税理士
それを知っていると、(「子の代わりに相続人になったのだから子と同じ扱いだろう」と軽く考えてしまい)逆に間違ってしまう可能性がありますので、ご注意を。