【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

賃貸物件の建物のみを贈与した場合の相続税申告における建物敷地の評価

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税対策により賃貸物件の建物のみを贈与した後に相続が発生した場合の、その建物の敷地の評価について、お話します。


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応

または はこちらから


相続税対策で賃貸物件の建物のみを贈与

甲さんは、A土地・C土地を所有していました。

甲さんは、A土地・C土地の上にそれぞれB建物・D建物を建築し、第三者である丙さん・丁さんに住宅(貸家)として貸すことにしました。

その後、長女の乙さんが「B建物が欲しい(私が大家さんになる)」と言うので、甲さんは「相続税対策にもなるからいいか」と考え、B建物のみを乙さんに贈与しました。

丙さんから甲さんの預金口座に毎月家賃が振り込まれると、どんどん預金口座の残高が増え、それとともに、甲さんが亡くなった場合の相続税も増えます(預金も相続財産だからです)。

乙さんの預金口座に家賃が振り込まれるようにすれば、それを避けることができます。

想う相続税理士秘書

A土地は甲さん所有のままで、B建物のみが乙さんの所有に変わりました。

親子間なので、甲さんは乙さんから地代を受け取らず、A土地をタダで貸すことにしました。

その後、甲さんが亡くなりました。

甲さんの相続税申告をする際、A土地・C土地はどのように評価するでしょうか?

丙さん・丁さんはずっと住んでくれています。

貸家の敷地は評価額が下がる

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4614 貸家建付地の評価
概要
貸家建付地とは、貸家の敷地の用に供されている宅地、例えば、その宅地を所有する方が建築したアパートやビルなどを他に貸し付けている場合の、その敷地である宅地をいいます。
計算方法・計算式
貸家建付地の価額は、次の算式で求めた金額により評価します。
貸家建付地の価額=自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合×借家権割合

貸家の敷地も、この貸家建付地に該当します。

もし、A土地・C土地の貸す前の評価額(自用地としての価額)が1,000万円で、A土地・C土地の所在する地域の借地権割合が40%だとします。

借家権割合は30%ですので、1,000万円の土地が
貸家建付地の価額=1,000万円-1,000万円×40%×30%=880万円
となり、評価額が12%下がります。

でも、ちょっと気になることがあります。

C土地は上記のように評価額が12%下がりそうですが、A土地の上のB建物は、乙さんに贈与したため、住んでいる丙さんに貸しているのは(大家さんは)乙さんです。

そして、A土地は乙さんにタダ(使用貸借)で貸しています。

国税庁HP(一部抜粋)
使用貸借に係る土地についての相続税及び贈与税の取扱いについて
(使用貸借に係る土地等を相続又は贈与により取得した場合)
3 使用貸借に係る土地又は借地権を相続(遺贈及び死因贈与を含む。以下同じ。)又は贈与(死因贈与を除く。以下同じ。)により取得した場合における相続税又は贈与税の課税価格に算入すべき価額は、当該土地の上に存する建物等又は当該借地権の目的となっている土地の上に存する建物等の自用又は貸付けの区分にかかわらず、すべて当該土地又は借地権が自用のものであるとした場合の価額とする。

タダで貸している土地は、自用地としての価額(「自用のものであるとした場合の価額」)で評価します。

ということは、A土地の評価額は1,000万円ということになるのでしょうか?

建物の所有者の変更は賃借人の権利に影響を与えない

A土地は貸家建付地として評価します(C土地と同じ880万円評価となります)。

出典:TAINS(資産課税課情報R060700-013)(一部抜粋加工)
資産課税課情報 第13号 「資産税質疑事例集」 令和6年7月作成
東京国税局 課税第一部 資産課税課 資産評価官
使用借権が設定されている場合の貸家建付地の評価
本事例においては、B建物の賃貸借契約が、本件贈与の前に、被相続人甲とB建物の賃借人丙との間で締結されているところ、被相続人甲は、当該賃貸借契約の締結の時において、B建物の所有者であるとともに、B建物の敷地であるA土地の所有者でもあったから、同賃貸借契約に係る賃貸借により建物Bの賃借人丙が有することとなったA土地の使用権は、財産評価基本通達31《借家人の有する宅地等に対する権利の評価》に定める「借家人の有する宅地等に対する権利」として評価されることとなる。
そして、建物の所有者であるとともに当該建物の敷地である土地の所有者でもある者との間で締結された賃貸借契約に基づく当該建物の賃借人の有する当該土地の使用権は、当該建物の所有者に異動があり、新たな当該建物の所有者の敷地利用権が使用貸借に基づくものになったとしても、変動がないと解するのが相当であると考えられている(参考S38.2.21最判民集17巻1号219頁)。
したがって、B建物の所有者が本件贈与により乙となり、B建物の新たな所有者乙の敷地利用権が使用貸借に基づくものとなったとしても、建物Bの賃借人丙が有するA土地の使用権に変動はなく、同賃貸借により建物Bの賃借人丙が有することとなったA土地の使用権が財産評価基本通達31に定める「借家人の有する宅地等に対する権利」として評価されることに変わりはないことから、A土地は貸家建付地として評価することとなる。

想う相続税理士

評価する際には、過去の経緯(所有者の変更)も確認しましょう。