相続税専門税理士の富山です。
今回は、同族会社の株式に関する「特定の評価会社」について、お話します。
なぜ「特定の評価会社」という区分があるのか?
非上場の同族会社の株式を相続税の申告において評価する場合には、原則として「類似業種比準方式」や「純資産価額方式」という方法を使います。
ところが、会社の資産の所有内容や事業の成熟度によっては、通常の会社と同じ方法で評価すると実態から大きくズレてしまうことがあります。
たとえば、事業よりも金融資産や土地の保有に重心がある会社、設立してまだ実績が出ていない会社、すでに事業をやめて清算に向かっている会社などです。
こうした会社を、相続税評価ではまとめて「特定の評価会社」として取扱い、通常と異なる評価方法により評価することになります。。
平たく言えば、「通常の事業会社と同じ物差しで測るとオカシクなる会社は、別の物差しで測ってください」という仕組みです。
特定の評価会社の種類とその評価方法
特定の評価会社の株式は、原則として、①から⑤については純資産価額方式により、⑥については清算分配見込額により評価することになっています。
なお、①から④の会社の株式を取得した同族株主以外の株主等については、特例的な評価方式である配当還元方式により評価します。
- 類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」のうち直前期末の比準要素のいずれか2つがゼロであり、かつ、直前々期末の比準要素のいずれか2つ以上がゼロである会社(比準要素数1の会社)の株式
- 株式等の保有割合(総資産価額中に占める株式、出資および新株予約権付社債の価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(株式等保有特定会社)の株式
- 土地等の保有割合(総資産価額中に占める土地などの価額の合計額の割合)が一定の割合以上の会社(土地保有特定会社)の株式
- 課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日)において開業後の経過年数が3年未満の会社や、類似業種比準方式で評価する場合の3つの比準要素である「配当金額」、「利益金額」及び「純資産価額(簿価)」の直前期末の比準要素がいずれもゼロである会社(開業後3年未満の会社等)の株式
- 開業前または休業中の会社の株式
- 清算中の会社の株式
順番にも注意
複数の「特定の評価会社」に該当する場合には、次の順番で判定していき、該当すればその該当会社として評価します。
後の順番の会社にも該当し、その該当会社として評価した方が安いから、そっちで評価する、ということはできません。
- 清算中の会社
- 開業前または休業中の会社
- 開業後3年未満の会社
- 比準要素数0の会社
- 土地保有特定会社
- 株式等保有特定会社
- 比準要素数1の会社
想う相続税理士
特定の評価会社に該当すると、想定よりも実際の評価額が高くなる場合がありますので、ご注意を。
