相続税専門税理士の富山です。
今回は、市街化調整区域にある「雑種地」の評価で、比準土地を宅地とすべきか農地とすべきかが争われた裁決事例について、お話します。
出典:TAINS(F0-3-613)(一部抜粋加工)
平30-04-17裁決
市街化調整区域の「雑種地評価」は、なぜモメやすいのか?
相続税の土地評価は、基本的に「相続開始時点で、その土地がどう使われていたか」を土台に考えます。
ただし、雑種地は「不動産登記事務取扱手続準則」に「(23) 雑種地 以上のいずれにも該当しない土地」とあるように、扱いがちょっと変わっていて、厄介な土地です。
財産評価基本通達82では、雑種地は「状況が類似する付近の土地(比準土地)」を選び、その土地の評価額を基にして、位置や形状などの差を調整して評価するとされています。
ここで一番つまずきやすいのが、「(例えば)比準土地を、宅地にするのか、農地にするのか」です。
市街化調整区域だと、一般の方は「建物が建たない=農地みたいなものでは」と感じやすい一方で、税務の評価はそれだけで決まりません。
周囲が純農地なのか、宅地が点在しているのか、道路の状況はどうか、過去に転用されているか、外観は宅地に近いかなど、複数の材料で総合判断されます。
今回の事例は、まさに「周囲が純農地でも純宅地でもなく、混在している」タイプで、比準土地を一律に決めにくいケースでした。
比準土地は宅地か農地か?判断基準はどこに置くべき?
相続人側は「農地(畑)を基に評価したい」と主張し、税務署側は「宅地を基に評価すべき」として更正等を行いました。
審判所は、「将来どうなるか」よりも「相続開始時点の現状で、状況が類似する土地はどれか」という発想を前面に出しました。
その上で、本件では「宅地比準が妥当」だと判断するために、主に次の事情を積み上げています。
まず、市街化区域との距離が近いことです。
次に、周囲に宅地が点在していて、土地利用が混在していることです。
さらに、建築基準法42条1項の道路に囲まれていることも評価材料にされています。
そして決定的なのが、過去に農地法5条の転用許可を受けて以降、長期間にわたり農耕に供されておらず、砕石敷きや太陽光設備など、外観が宅地に近い状態だった点です。
加えて、固定資産税評価額が「付近の宅地に比準」して算定されていたことも、宅地比準を後押しする材料になりました。
一方、相続人側は「市街化調整区域で、マスタープラン上も営農保全地区なので宅地化期待は低い」と主張しました。
しかし審判所は、比準土地の選定は「現状類似」の問題であり、マスタープラン自体にも法的強制力があるとは言い難いとして、その主張を採用しませんでした。
また、「大規模な太陽光設備の敷地は、一般的に農地や山林などが多い」といった一般論も、それだけでは直ちに比準土地を農地にする根拠にはならない、という整理がされています。
雑種地評価で失敗しないためのチェックポイント
この裁決から、実務で特に注意したいポイントを、噛み砕いて整理してみます。
一つ目は、「現況」と「周囲」をセットで見ることです。
市街化調整区域という言葉だけで農地評価に寄せてしまうと、後から「宅地比準が相当」だと判断された場合に、評価額の差が大きくなりやすく、追徴や加算税のリスクが高まります。
二つ目は、写真と地歴(過去の経緯)です。
砕石敷き、資材置場、駐車場、太陽光設備など、見た目が宅地に近い利用が長く続くと、農地比準は通りにくくなります。
三つ目は、固定資産税評価額の算定根拠の確認です。
固定資産税が「標準宅地に比準」している場合、相続税の比準土地を検討する上でも、強い参考資料になる場合があります。
四つ目は、法的規制の「織り込み」です。
市街化調整区域は原則建築不可なので、宅地比準で評価する場合でも、建築制限をどう減価(しんしゃく)するかが実務の焦点になります。
本件では、課税実務の取扱いとして、建築が原則できないことを踏まえ「しんしゃく割合50%」が相当とされています。
五つ目は、「貸し付けられている雑種地」の扱いです。
本件では一部が駐車場として賃貸されていましたが、アスファルト舗装などの設備がなく、単に車両の保管場所を提供する程度だと認定され、賃借権控除は不要と判断されています。
同じ「駐車場賃貸」でも、設備投資の程度や実態で結論が変わり得るため、契約書だけでなく現地確認が重要です。
雑種地は、見た目が地味でも、評価の分岐点が多く、相続税申告の中では「モメやすい土地」に入ります。
特に市街化調整区域で、周囲が宅地と農地の混在エリアの場合、比準土地の選定は最初から専門家目線で組み立てないと、申告後の説明が苦しくなりがちになります。
想う相続税理士
相続開始時点の現況、周囲の土地利用、道路、転用歴、固定資産税の評価のされ方まで揃えて、比準土地を「説明できる形」にしておくことが、追徴リスクを抑える近道になります。
迷う場合は、早い段階で資料収集と現地確認を行い、評価方針を固めることをおすすめします。
