相続税専門税理士の富山です。
今回は、5,000万円を相続した場合にどのくらい相続税がかかるのか、その目安と家族構成による違いについて、お話します。
5,000万円を相続したら相続税はかかる?まずは「基礎控除」を押さえる
相続税は、遺産があれば必ずかかる税金ではありません。
「遺産に係る基礎控除額」という非課税枠があり、その範囲内であれば相続税はかかりません。
この非課税枠は、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
という計算式で求めます。
たとえば、法定相続人が1人なら3,600万円、2人なら4,200万円、3人なら4,800万円、4人なら5,400万円というイメージです。
ここでポイントになるのは、「相続税の対象になる正味の遺産額」が、基礎控除を超えるかどうかです。
正味の遺産額とは、プラスの財産(預貯金・不動産・有価証券など)から、債務や葬式費用などを差し引いた金額に、生前贈与の持ち戻しなどを加味したものです。
この記事では説明を分かりやすくするため、正味の遺産額がちょうど5,000万円で、借金や葬式費用、生前贈与などはないものとしてお話します。
この前提で、「家族構成別にどのくらい相続税がかかることが多いか」という目安を見ていきましょう。
想う相続税理士秘書
| 法定相続分に 応ずる取得金額 |
税率 | 控除額 |
| 1,000万円以下 | 10% | - |
| 1,000万円超から3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
| 3,000万円超から5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
| 5,000万円超から1億円以下 | 30% | 700万円 |
| 1億円超から2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
| 2億円超から3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
| 3億円超から6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
| 6億円超 | 55% | 7,200万円 |
家族構成別の5,000万円相続時の相続税イメージ
まず、相続人が「子供1人だけ(配偶者なし)」というケースを考えてみます。
この場合、法定相続人は1人なので、非課税枠は「3,000万円+600万円×1人=3,600万円」です。
5,000万円-3,600万円=1,400万円が、相続税の対象になる「課税遺産総額」となります。
1,400万円について15%の税率を掛け、そこから50万円を差し引いて計算します。
1,400万円×15%=210万円となり、210万円-50万円=160万円が「全体の相続税」である「相続税の総額」となります。
相続人が子供1人であれば、この「160万円」が目安となります。
次に、相続人が「配偶者+子供1人」の2人の場合を見てみましょう。
この場合、非課税枠は「3,000万円+600万円×2人=4,200万円」です。
5,000万円-4,200万円=800万円が課税遺産総額となります。
これを、法定相続分「配偶者1/2、子供1/2」に従って按分すると、配偶者400万円、子供400万円となります。
どちらも1,000万円以下なので、税率10%で計算します。
子供:400万円×10%=40万円
40万円+40万円=「80万円」が相続税の総額となります。
実際に法定相続分どおりに遺産分けするかどうかは関係ありません。
上記のように、「法定相続分により按分した金額に税率を掛けて全体の相続税(相続税の総額)を求める」という決まりになっています。
全体の相続税が計算できたら、次は、それを財産の取得割合に応じて按分します。
ここで「配偶者の税額軽減」が効いてきます。
配偶者は、取得した財産が一定額(最低でも1億6,000万円)までなら相続税がゼロになる特例(「配偶者の税額軽減」と言います)があります。
配偶者が全財産(5,000万円)を相続した場合には、
配偶者:80万円×100%-配偶者特例80万円=0円
子:80万円×0%=0円
となります。
配偶者が全財産の40%、子供が全財産の60%を相続した場合には、
配偶者:80万円×40%-配偶者特例32万円=0円
子:80万円×60%=48万円
となります。
相続人が4人以上(例えば、配偶者+子供3人)の場合は、非課税枠が5,400万円となり、正味の遺産額5,000万円であれば、相続税がかからないケースも出てきます。
本当に大事なのは「金額」だけでなく「分け方」と「将来のこと」
ここまで見てきたように、相続税がどのくらいになるかは、家族構成(相続人の人数や配偶者の有無)によって大きく変わります。
同じ5,000万円でも、家族構成の違い(相続人が1人なのか、配偶者と子供がいるのか、子供が何人いるのか)で、相続税の負担感はかなり違ってきます。
また、実際の相続では、債務や葬式費用、生前贈与、生命保険、不動産の評価、二次相続(将来、配偶者が亡くなるときの相続)まで含めて考える必要があります。
「今この相続でいくら税金がかかるか?」だけで判断してしまうと、二次相続でかえって税負担が重くなってしまうケースも珍しくありません。
特に、配偶者の税額軽減は強力な制度ですが、「配偶者にできるだけ多く残せばとりあえず安心」と考えてしまうと、二次相続の時に子供世代の相続税が重くなることがあります。
一方で、相続人が少ないご家庭では、「思ったより相続税がかかる」というケースが結構あります。
早めに試算(シミュレーション)をしておくことで、争族対策や相続税対策(節税)の必要性を具体的に実感できるようになるはずです。
想う相続税理士
