相続税専門税理士の富山です。
今回は、未成年者控除について、お話します。
未成年者は相続税が安くなる?
相続人が未成年者である場合には、その方が18歳になるまでの年数1年につき、10万円が控除されます。
18歳までの年数に1年未満の年数がある場合には、これを切り上げます。
その未成年者が10歳6ヶ月だった場合、
10万円×8年=80万円
を相続税から差し引くことができます。
ただし、未成年者控除には、下記のような論点があります。
国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋加工)
無制限納税義務者に係る未成年者控除の控除不足額を制限納税義務者である未成年者から控除することの可否
【照会要旨】
被相続人甲の死亡により、その子乙及び丙が甲の遺産を取得しました。乙及び丙は、いずれも未成年者です。乙は制限納税義務者(日本との間で遺産、相続及び贈与に関する租税条約を締結していない外国の居住者です:相法1の31四)であるため相続税法第19条の3に規定する未成年者控除の適用を受けることはできませんが、丙は無制限納税義務者(相法1の3①一又はニに該当する者)であるため同法第19条の3に規定する未成年者控除の適用を受けることができます。
父甲さんが亡くなり、長男乙さん(未成年者)・二男丙さん(未成年者)が相続人として財産を相続しました。
この場合、二男丙さんは未成年者控除を適用できるけれども、長男乙さんは外国に住んでいるため未成年者控除を適用できない、こういうことが起こるのです。
未成年者控除額が使い切れなかったら?
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4164 未成年者の税額控除
概要
未成年者控除の額
なお、未成年者控除額が、その未成年者本人の相続税額より大きいため控除額の全額が引き切れないことがあります。この場合は、その引き切れない部分の金額をその未成年者の扶養義務者(注)の相続税額から差し引きます。
また、その未成年者が今回の相続以前の相続においても未成年者控除を受けているときは、控除額が制限されることがあります。
(注) 扶養義務者とは、配偶者、直系血族および兄弟姉妹のほか、3親等内の親族のうち一定の者をいいます。
二男丙さんが100万円の未成年者控除を適用できるとします。
でも、二男丙さんの相続税が60万円だと、適用できない部分(引き切れない部分)が40万円発生します。
これは、その二男丙さんの扶養義務者の相続税から控除することができます。
長男乙さんは、二男丙さんの兄弟姉妹なので、扶養義務者に該当します。
長男乙さんの相続税も100万円です。
この100万円から40万円を控除することができるのでしょうか?
長男乙さんは上記にあるとおり、外国に住んでいるため未成年者控除を適用できません。
しかし、丙の相続税額が少ないため控除不足額が生じます。このような場合には、その控除不足額は、制限納税義務者である未成年者乙の相続税額の計算上控除することができますか。
未成年者の扶養義務者としてなら適用可能
【回答要旨】
他の相続人に係る未成年者控除の控除不足額は、その者の扶養義務者から控除することができます。この場合、その扶養義務者は、制限納税義務者であるかどうか、また、未成年者であるかどうかは問いません。
したがって、丙の未成年者控除の控除不足額は、乙の相続税の計算上控除することができます。
長男乙さんが15歳6ヶ月で未成年者であっても、その相続税100万円から、
10万円×3年=30万円
を差し引くことはできません。
しかし、弟丙さんが使い切れなかった未成年者控除の金額は、長男乙さんが外国に住んでいて未成年者控除が適用できない方に該当していても、長男乙さんの相続税から控除することができます。
想う相続税理士
つまり、使い切れなかった未成年者控除額を扶養義務者の相続税から控除する場合には、外国に居住しているかどうかどころか、未成年者に該当するかどうかも関係ない、ということです。