【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

実際には貸していなくても貸付事業用地として認められるのはどのレベルまで?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、小規模宅地等の特例における「貸付事業の用に供されていた宅地等」について、お話します。


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相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?

相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。

このうち、「(4)貸付事業用宅地等」については、

租税特別措置法(一部抜粋)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
貸付事業用宅地等 被相続人等の事業(不動産貸付業その他政令で定めるものに限る。以下この号において「貸付事業」という。)の用に供されていた宅地等

と規定されています(その他の要件もあります)。

でも、実際には貸していない場合でも、この「貸付事業の用に供されていた宅地等」に該当する場合があります。

アパートやマンションの一部が一時的に空室だった場合

租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
69の4-24の2 被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等
貸付事業の用に供されていた宅地等には、当該貸付事業に係る建物等のうちに相続開始の時において一時的に賃貸されていなかったと認められる部分がある場合における当該部分に係る宅地等の部分が含まれることに留意する

基本的には、実際に貸していることが要件となるのですが、一定の条件に該当する場合には、実際に入居者がいなくてもOKとなる場合があります。

国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋加工)
貸家建付地等の評価における一時的な空室の範囲
アパート等の一部に空室がある場合の一時的な空室部分が、「継続的に賃貸されてきたもので、課税時期において、一時的に賃貸されていなかったと認められる」部分に該当するかどうかは、その部分が、
①各独立部分が課税時期前に継続的に賃貸されてきたものかどうか、
②賃借人の退去後速やかに新たな賃借人の募集が行われたかどうか、
③空室の期間、他の用途に供されていないかどうか、
④空室の期間が課税時期の前後の例えば1ケ月程度であるなど一時的な期間であったかどうか、
⑤課税時期後の賃貸が一時的なものではないかどうか

などの事実関係から総合的に判断します。

既存の建物等の移転中または建替え中だった場合

租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
69の4-5 事業用建物等の建築中等に相続が開始した場合
被相続人等の事業の用に供されている建物等の移転又は建替えのため当該建物等を取り壊し、又は譲渡し、これらの建物等に代わるべき建物等(被相続人又は被相続人の親族の所有に係るものに限る。)の建築中に、又は当該建物等の取得後被相続人等が事業の用に供する前に被相続人について相続が開始した場合で、当該相続開始直前において当該被相続人等の当該建物等に係る事業の準備行為の状況からみて当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったと認められるときは、当該建物等の敷地の用に供されていた宅地等は、事業用宅地等に該当するものとして取り扱う。

既に貸付事業を営んでいて、その建物等の移転や建替えの途中であったため、実際には貸していなかった、というケースでも、一定の要件に該当すれば、OKの場合があります。

ただし、「移転」「建替え」に該当しないケース、例えば、従前の建物等はそのままに、新たな場所に建物等を建築中だった、というようなパターンや、従前の建物がない、つまり新規に事業を立ち上げて、その建物等が建築中だった、というようなパターンの場合には、この取扱いには該当しないものと思われます。

次のような規定もあります。

想う相続税理士秘書

租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
69の4-24の2 被相続人等の貸付事業の用に供されていた宅地等
69の4-5の取扱いがある場合を除き、新たに貸付事業の用に供する建物等を建築中である場合や、新たに建築した建物等に係る賃借人の募集その他の貸付事業の準備行為が行われているに過ぎない場合には、当該建物等に係る宅地等は貸付事業の用に供されていた宅地等に該当しないことに留意する。

想う相続税理士

上記の「速やかにその事業の用に供することが確実であったと認められるとき」というのは曖昧な決まりのように見えますが、相続税の申告期限までに事業の用に供していればOKと規定されています。

租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
69の4-5 事業用建物等の建築中等に相続が開始した場合
なお、当該被相続人と生計を一にしていたその被相続人の親族又は当該建物等若しくは当該建物等の敷地の用に供されていた宅地等を相続若しくは遺贈により取得した当該被相続人の親族が、当該建物等を相続税の申告期限までに事業の用に供しているとき(申告期限において当該建物等を事業の用に供していない場合であっても、それが当該建物等の規模等からみて建築に相当の期間を要することによるものであるときは、当該建物等の完成後速やかに事業の用に供することが確実であると認められるときを含む。)、当該相続開始直前において当該被相続人等が当該建物等を速やかにその事業の用に供することが確実であったものとして差し支えない