相続税専門税理士の富山です。
今回は、遺言を作成する場合の注意点について、お話します。
遺言に全財産が網羅されていなかったらどうなる?
亡くなった方の遺言があった場合、原則として、その遺言の内容のとおりに遺産分けをすることになりますが、その遺言に記載されていない財産があったら、どうすればいいのでしょうか?
遺言に記載されていない財産については、遺言がない場合と同様の取扱いとなります。
つまり、相続人間における遺産分割協議により遺産分けを決めます。
遺産分割協議がまとまらなければ、家庭裁判所における調停・審判等で決めることになります。
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追加で遺言を作成して網羅することも可能
遺言者が生前に、遺言に記載しなかった財産があることに気付いた場合、その記載もれの財産についての遺言を作成することができます。
遺言は複数あってもいいのです。
ただし、後から作成した遺言に、前に作成した遺言と異なる内容になっている部分がある場合には、その異なる内容になっている部分については、後から作成した遺言が有効になります。
民法(一部抜粋)
(前の遺言と後の遺言との抵触等)
第千二十三条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす。
贈与が成立していなかったらどうなる?
亡くなったAさんには遺言があり、その内容は「長男Bさんに全財産を相続させる」という内容でした。
Aさんは生前、(遺言で全財産を長男Bさんに相続させる代わりに)二男CさんにD銀行の預金を贈与し、バランスを取ったつもりでした。
「バランスを取ったつもり」というのはどういうことかというと、実は贈与が成立していなかったのです。
つまり、その預金は二男Cさんの名義になっていても、実質的にはAさんのもの(相続財産)だ、ということになります。
いわゆる「名義預金」です。
Bさんが、Aさんの書斎の机の引き出しの中からその預金通帳を見つけ、贈与が成立していないことを確認したら、自分のものだと主張するでしょう。
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とはいえ、名義はCさんになっていますから、CさんがD銀行に行けば、解約してCさんのポケットに入れることもできるでしょう。
しかし、「長男Bさんに全財産を相続させる」という遺言を添付して相続税の申告をするのであれば、その預金の相続税は長男Bさんが負担することになります。
せっかく遺言があるのに、面倒くさい状況に陥ります(裁判で名義預金として確定させたり、Cさんが使い込んでしまったら返還を請求する、などの手続きが必要になるでしょう)。
したがって、遺言を作成する場合には、過去の贈与が成立しているか(AさんからCさんへの贈与が成立していなければ、Aさんのモノのままですからね)をきちんと確認するようにしましょう。
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