【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

同族会社が亡くなった方から「借地権の無償設定」を受けると相続税に波及する?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、同族会社が被相続人(亡くなった方)から借地権の無償設定を受けたことによる、「みなし贈与」「出資評価」「生前贈与加算」等に関する裁決事例について、お話します。

出典:TAINS(F0-3-220)(一部抜粋加工)
平20-05-30裁決


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法人の利益は株主の利益、3年以内だと相続税にも波及

本件は、被相続人が保有する土地について、出資の大半を親族が有する同族会社が借地権の無償設定を受けた点が出発点です。

同族会社が無償で財産の提供を受けて出資(株式)価額が増えると、その増加分を社員(株主等)が「贈与により取得したものとみなす」(相続税法第9条)という取扱いが問題になります。

そして、みなし贈与の時期が「相続開始前3年以内」に入れば、相続税の計算において「生前贈与加算」(相続税法第19条)が絡みます。

つまり、

そもそも「いつ」借地権の無償設定(利益の発生)があったのか
その利益(出資価額の増加)を計算する際、借地権を「どう評価」するのか
この2点が、相続税の負担に直結する争点になります。

借地権の無償設定を受けたのはいつ?

請求人側は、農地法の手続(届出の受理日)や、造成工事等により土地を使用し始めた時点などを根拠に、3年よりもっと前に利益が発生している旨を主張しています。

これに対して裁決では、土地賃貸借契約がいつ成立し、無償で借地権設定を受けることが「明確になったのはいつか」という観点から、契約書の締結日や賃貸借期間の開始日、賃料支払の開始状況などが丁寧に検討されています。

特に、契約書締結前に賃料授受がなく、賃料・面積・期間等の基本条件について具体的合意が認められないこと等を踏まえ、借地権の無償設定時期を判断しています。

以上のことから、本件土地に係る賃貸借契約が成立したのは、■と本件被相続人との間において本件土地賃貸借契約書を締結した平成13年5月24日と考えるのが相当であり、本件借地権は、同契約書における賃貸借期間の開始の日である平成13年6月1日に無償で設定されたということができ、この日が、■が本件被相続人から贈与を受けたとみなされる日となる。

相続税の実務感覚としても、「工事が始まった」「同意書がある」といった事情だけで、直ちに「借地権の無償設定(=利益の発生)」が確定するとは限りません。

特に親族間・同族会社間の取引では、実態は動いていても、肝心の条件が曖昧なまま進むことがあります。

その場合、どの時点で「賃貸借として成立したのか」「無償であることが特定できるのか」が、後から争点化し得る点に注意が必要です。

時価評価する3年以内取得土地等に該当しない?

次に重要なのが、みなし贈与の利益(出資価額の増加)を計算する局面で、会社側の純資産価額計算に入ってくる「借地権」をどう評価するかです。

原処分庁は、財産評価基本通達185(純資産価額)のかっこ書き、つまり「課税時期前3年以内に取得した土地及び土地の上に存する権利等は、通常の取引価額に相当する金額で評価する」という考え方を用いようとしました。

しかし裁決では、本件のように、会社に無償で財産の提供があった時に贈与があったとみなされ、その提供日が課税時期となるケースでは、そもそも「課税時期前3年以内に取得」という整理に入りにくいことを、文理解釈と趣旨の両面から検討しています。

さらに、相続税法第9条が「実質的に贈与と同様の経済的効果がある場合の公平」を狙う制度であることに照らすと、個人が贈与で土地等を取得した場合(路線価等で評価する世界)と、法人が贈与で土地等を取得し株主等にみなし贈与が生じる場合とで、評価の入口がズレてしまうのは合理的ではない、という問題意識も示されています。

ザックリまとめると、この裁決のポイントは次のとおりです。

「同族会社にタダで使わせた(借地権を無償で設定した)」という行為が、間接的に(当事者が「贈与のつもり」でなくても)税務上は贈与と同様の効果として扱われ得る
さらに、それが相続開始前3年以内の生前贈与加算といった相続税の論点に連鎖する可能性がある
その場合に、出資(株式)の評価計算の中で、借地権の評価方法が争点化し得る(評価通達185の扱いをどう考えるか等)

想う相続税理士

法人税→贈与税→相続税と課税が波及していきますので、ご注意を。