相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の延納が困難な場合に検討することになる「特定物納制度」について、お話します。
特定物納制度とは?
相続税は、原則として金銭で一括納付することが求められますが、どうしても現金が用意できない場合には、「延納」(現金分割納付)や「物納」(相続財産現物納付)といった制度を利用することができます(一定の要件を満たす必要があります)。
延納の許可を受けた相続税について、延納条件を変更してもなお延納を継続することが困難となった場合には、一定の要件に該当すれば「特定物納制度」により「延納から物納に途中で変更」することができます。
特定物納制度の要件とは?
特定物納制度を適用するためには、次のような要件を満たすことが必要となります。
- 特定物納申請を行うときに、延納条件の変更を行ったとしても、延納によっても金銭で納付することが困難な事由があること及びこの延納によっても金銭で納付することが困難な金額を限度とすること
- 延納許可に係る相続税の申告期限(相続開始があったことを知った日の翌日から10か月目の日)から10年以内に申請されること
- 特定物納申請書及び物納手続関係書類を所轄税務署長に提出すること
- 特定物納制度が利用できるのは、特定物納申請の日までに分納期限の到来していない延納税額に限られること
物納財産の収納価額に注意
通常の物納の場合、物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額です。
つまり、相続税の申告書に記載された金額(相続開始時点の相続税評価額)ということになります(その金額が正しいことが前提)。
それに対して、この特定物納に充てる財産の評価は、特定物納申請を行う時の価額によることになります。
この価額は、特定物納申請財産について、特定物納申請書が提出されたときの財産の状況により、財産評価基本通達を適用して求めた価額です。
特定物納に充てることのできる財産については、管理処分不適格な財産でないこと、物納劣後財産に該当する場合は他に物納に充てるべき適当な財産がないこと、物納に充てることのできる順位によっていることなど、通常の物納申請の場合と同様の要件に該当することが必要です。
想う相続税理士秘書
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特定物納申請財産が延納担保になっている場合で、特定物納許可によりこの延納担保に係る抵当権が抹消できるとき(この他には抵当権等が付されていない場合に限る)は、この財産は管理処分不適格財産として取り扱わないこととされています。