相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における小規模宅地等の特例の「家なき子特例」について、お話します。
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相続人が建てた家に亡くなった方がお一人で住んでいた場合
父Aさん、その長男Bさん、というご家族がいたとします。
父Aさんの奥様は既に亡くなられていて、父Aさんは、父Aさんが所有する土地Cの上に長男Bさんが建てた家Dにお一人で住んでいました。
長男Bさんは仕事の関係で、遠方の会社の寮に住んでいました。
この場合、父Aさんが住んでいた土地Cは、小規模宅地等の特例が適用できるのでしょうか?
このような場合、「家なき子特例」を適用できる可能性があります。
租税特別措置法の家なき子特例の適用者の部分を見ていきます。
租税特別措置法(一部抜粋)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
ロ 当該親族(当該被相続人の居住の用に供されていた宅地等を取得した者であつて財務省令で定めるものに限る。)が次に掲げる要件の全てを満たすこと
「財務省令で定めるもの」は、
租税特別措置法施行規則(一部抜粋)
第23条の2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
相続税法(昭和25年法律第73号)第1条の3第1項第1号若しくは第2号の規定に該当する者又は同項第4号の規定に該当する者のうち日本国籍を有する者
です。
配偶者と法定相続人である同居親族がいないことが要件
租税特別措置法(一部抜粋)
(当該被相続人の配偶者又は相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋に居住していた親族で政令で定める者がいない場合に限る。)。
父Aさんの奥様は既に亡くなられていて、父Aさんはお一人で住んでいたため、この要件も満たします。
「政令で定める者」は、
租税特別措置法施行令(一部抜粋)
第40条の2 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
当該被相続人の民法第5編第2章の規定による相続人(相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人
です。
相続開始直前において亡くなった方が住んでいた建物はOK
租税特別措置法(一部抜粋)
(1) 相続開始前3年以内に相続税法の施行地内にある当該親族、当該親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人として政令で定める法人が所有する家屋(相続開始の直前において当該被相続人の居住の用に供されていた家屋を除く。)に居住したことがないこと。
ザッと見ると、長男Bさんが相続開始前3年以内に自己所有の建物や親族等の所有する建物に住んでいた場合だと、要件を満たさないのですが、カッコ書きにあるように、亡くなった方が住んでいた建物ならOKです。
長男Bさんが父Aさんと同居していれば、(家なき子特例とは別のバーションで)同居親族として小規模宅地等の特例を適用することができたかもしれません。
でも、たまたま相続開始直前だと同居していなかった(会社の寮にいた)、そして、相続開始前3年以内だと、自分が建てた(所有している)家に住んでいた(寮に入ったのは3年以内)、という場合でも、その家が亡くなった方が住んでいた家であれば、長男Bさんが3年以内に住んでいても関係ないのです。
所有しているかどうかは相続開始時点の居住建物についての話
(2) 当該被相続人の相続開始時に当該親族が居住している家屋を相続開始前のいずれの時においても所有していたことがないこと。
長男Bさんが、会社の寮を所有していたことがなければ、この要件も満たします。
家なき子特例のために家に引っ越さなくても大丈夫
(3) 相続開始時から申告期限まで引き続き当該宅地等を有していること。
相続を機に家Dに引っ越さず、そのまま会社の寮に住み続けることにより、申告期限までの家Dにおける「居住継続要件」を満たせなくても、申告期限までに土地を売ったりせず「所有継続要件」を満たせば、この要件も満たします。
想う相続税理士