相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における小規模宅地等の特例の適用対象について、お話します。
相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?
相続税の計算においては、一定の事業用または居住用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。
亡くなった方のご自宅の敷地が330㎡以下でその評価額が2,000万円だったとします。
この自宅敷地に対して「(3)特定居住用宅地等」として小規模宅地等の特例を適用できれば、2,000万円×80%=1,600万円を減額して2,000万円△1,600万円=400万円で申告することができます(相続税が安くなります)。
誰の事業用または居住用?
小規模宅地等の特例の適用対象となるのは、「亡くなった方の事業用」または「亡くなった方の居住用」の土地なのでしょうか?
租税特別措置法(一部抜粋加工)
第69条の4 小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例
個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等で財務省令で定める建物又は構築物の敷地の用に供されているもののうち政令で定めるものがある場合
一定の要件を満たせば、被相続人、つまり、亡くなった方の事業用または居住用の土地だけではなく、その亡くなった方と生計を一にしていたその亡くなった方の親族の事業用または居住用の土地も対象となります。
生計一親族の事業用または居住用の土地を忘れるな!
亡くなった方が生前、長男夫婦と同居していたとします。
空いている土地があったので、そこを長男に貸して、長男はその土地に自分で店舗を建てて事業を行っていたとします。
亡くなった方と長男が生計一であれば、この土地は「特定事業用宅地等」として、小規模宅地等の特例の適用の可能性があります。
この場合、その土地の賃貸が無償であることが要件となります。
無償だと、「(亡くなった方にとっては)収入を生んでいない土地だから『事業用』の土地には該当しないだろう」と考えがちですが、そんなことはありません。
生計一親族の収入を生んでいる(生計一親族の事業用の土地である)からです。
想う相続税理士
ただし、その土地を長男が相続すると、相続後、長男は借地ではなく自分の土地(相続で自分のものになった土地)で事業を行うことになり、貸付事業の継続要件を満たさないことから、小規模宅地等の特例は適用できません。
仮に、その土地を次男が相続し、亡くなった方の代わりに今度は次男が土地を長男に貸すことになれば、貸付事業の継続要件を満たすことから、その他の要件を満たせば、「貸付事業用宅地等」として小規模宅地等の特例を適用することができます。