相続税専門税理士の富山です。
今回は、ネット上で公開されている税務相談サービスにおける相談者と税理士のやり取りを読んで思ったことについて、お話します。
贈与が成立したらそれに基づいて申告すればいいだけなんだけど・・・
相続税対策として生前贈与を行った場合、それが課税される贈与であれば、その贈与についての課税は、贈与税の申告期限である翌年の3月15日までに確定するはずです。
(これこれこういう)贈与があって、それに基づいて贈与税の申告をする、それで話は終わりのはずです。
しかし、実際には、その贈与(と思っているもの)が贈与とみなされなかったり、「定期金給付契約に基づく定期金に関する権利」と見られてしまわないか、ということを検討する必要があります。
一番大事なことは何かというと、実際に贈与の実態があるかどうかということを客観的に判断すること、そして、贈与をするのであればきちんと「贈与を成立させる」ことです。
もっと言うと、「贈与が成立した」ということを後で税務署に説明できるようにしておくことが重要です。
贈与税の申告をすれば贈与は成立する?
ちょっと贈与税が出るように、暦年課税贈与の基礎控除額110万円をちょっと超える贈与をして、贈与税の申告・納税をすれば、贈与が成立していた、ということを後で証明できるのでしょうか?
「贈与税の申告・納税をする」ことで「贈与を成立させる」ことはできません。
もっと言うと、贈与が成立していなくても、身銭を切って贈与税の申告・納税をすれば、税務署に「申告・納税してエライ!」と思われて、贈与が成立する、という訳ではないのです。
贈与税の申告をしていないということは贈与がなかったということ?
しかし、実際には、相続税の税務調査で過去の時効の贈与が見つかった場合、「贈与が成立していたと主張するのであれば、なぜ贈与税の申告をしていなかったのか」と詰問されることがあります。
それは、課税される贈与を受けているのであれば、贈与税の申告をするのが「当たり前」だからです。
その「当たり前」のことができていなかったのはなぜですか?という話をしているのです。
「その取引は、贈与じゃないんじゃないんですか?だから贈与税の申告をしなかったんじゃないですか?」ということを税務調査官は言いたいのです。
それに対して、贈与が成立していた、ということを確からしいと思わせる必要があります。
しかし、贈与者は既に亡くなっています。
あげた方・もらった方双方の「あげますよ」「もらいますよ」という意思があったか、ということを証明しようにも、もう片方の方はいないのです。
あなたはどうやって、税務調査官に、贈与が成立していた、ということを説明しますか?
そんな光景を思い浮かべてから、贈与を実行しましょう。
想う相続税理士