相続税専門税理士の富山です。
今回は、上場株式を相続する場合の留意点について、お話します。
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不動産よりも換金性が高い
不動産を相続したら、(なかなか)売れなかったり、売れる場合でもお金に換えるのに時間がかかったりします。
それに比べると、上場株式は、上場株式は、その名のとおり、証券取引所に上場されている(公開された市場がある)ため、相続の手続きに若干時間がかかるにしても、すぐにお金に換えることができます。
値上がりするかもしれないし、相続するなら上場株式が一番いいのでしょうか?
上場株式の譲渡も所得税・住民税の課税対象
お金に換えるため、相続した不動産を売却した場合、儲け(譲渡所得)が発生したら、所得税や住民税の課税対象となります。
税金の分だけ、手取りが減るのです。
これは、上場株式の場合も同じです。
税金がかかれば、手取りは減ります。
納めた相続税が所得税・住民税計算上の経費になる
上記でお話したとおり、相続した上場株式を売却した場合、儲け(譲渡所得)が発生したら、所得税や住民税の課税対象になるのですが、一定の要件を満たせば、相続の際に納めた相続税(の一部)を、上場株式を売却した儲けを計算する際の経費にすることができます(経費にできる分、儲けが減り、所得税・住民税が安くなります)。
死亡日にたまたま株価が高くても安心
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4632 上場株式の評価
概要
上場株式は、その株式が上場されている金融商品取引所が公表する課税時期(相続または遺贈の場合は被相続人の死亡の日、贈与の場合は贈与により財産を取得した日)の最終価格によって評価します。
ただし、課税時期の最終価格が、次の3つの価額のうち最も低い価額を超える場合は、その最も低い価額により評価します。
イ 課税時期の属する月の毎日の最終価格の月平均額
ロ 課税時期の属する月の前月の毎日の最終価格の月平均額
ハ 課税時期の属する月の前々月の毎日の最終価格の月平均額
R7.4.15に亡くなった場合、
- R7.4.15の最終価格
- R7.4の最終価格の月平均額
- R7.3の最終価格の月平均額
- R7.2の最終価格の月平均額
のうち、最も低い金額で評価することができます。
いつも1,000円前後で株価が推移していたのに、R7.4.15の前後だけ3,000円に上昇していた、という場合でも、3,000円をダイレクトに採用するのではなく、上記②③④と比較して安い株価(月平均額)を採用することができるのです。
死亡日の翌月以後に株価が下がったら大変
上記の①②③④が全部1,000円だったとすると、1,000円を採用することになります。
しかし、R7.5になったら、株価が100円になってしまったとします。
1万株相続して、相続税の実効税率が15%だとすると、1,000円×1万株=1,000万円に対する相続税150万円(=1,000万円×15%)を納めることになるのに、手元にある財産は、100円×1万株=100万円の価値しかない、なんてことが起こったりします。
物納は下落前の相続税評価額で計算する
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4214 相続税の物納
概要
物納財産の価額(収納価額)
物納財産を国が収納するときの価額は、原則として相続税の課税価格計算の基礎となったその財産の価額になります。
その上場株式の物納が認められれば、物納時の株価が100円でも、単価1,000円の上場株式として物納することができます。
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