【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続時精算課税贈与は贈与税が時効になっても相続税はちゃんと課税される

相続税専門税理士の富山です。

今回は、最近の判決を元に、暦年課税贈与には時効があるが、相続時精算課税贈与には時効がない、ということについて、お話します。


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贈与税の時効は6年または7年

国税の時効は原則5年ですが、贈与税の時効は6年であり、さらに、悪質な場合には、7年に延びます。

相続税法(一部抜粋加工)
第36条 贈与税についての更正、決定等の期間制限の特則
税務署長は、贈与税について、国税通則法第70条の規定(5年)にかかわらず、次の各号に掲げる更正若しくは決定又は賦課決定を当該各号に定める期限又は日から6年を経過する日まで、することができる。

4 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた贈与税についての更正決定若しくは賦課決定又は偽りその他不正の行為により国税通則法第2条第9号に規定する課税期間において生じた同条第6号ハに規定する純損失等の金額が過大にあるものとする同号に規定する納税申告書を提出していた場合における当該納税申告書に記載された当該純損失等の金額についての更正は、前3項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正決定又は賦課決定の区分に応じ、当該各号に定める期限又は日から7年を経過する日まで、することができる。

暦年課税贈与は相続の時にどう取り扱われる?

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4161 贈与財産の加算と税額控除(暦年課税)
概要
相続、遺贈や相続時精算課税に係る贈与(「相続等」といいます。)によって財産を取得した方(一定の方を除く)が、被相続人から「加算対象期間」に暦年課税に係る贈与によって取得した財産があるときは、その人の相続税の課税価格にその財産の贈与時の価額を加算します。

上記の「加算対象期間」は、令和5年度税制改正により、それまで「亡くなる前3年以内」だった加算対象期間が、最高7年に延びましたが、現時点の相続(令和8年までの相続)においては、まだ3年です。

ザックリ言うと、相続等で財産を取得した方が、亡くなった方から亡くなる前3年以内に暦年課税贈与により取得した財産がある場合、その贈与財産は相続税の課税対象となります(相続税が課税されます)。

この規定に金額基準はありません。

暦年課税贈与の基礎控除額(非課税枠)である110万円以下の贈与だったら、相続税は課税しない、なんて決まりはありません。

非課税贈与でなければ、1万円の贈与でも対象です。

1万円の贈与だったら、申告しないでしょうから、無申告だったとしても相続税の課税対象になる、ということです。

亡くなる前3年を超えていれば、相続税の課税対象にはなりませんが、年間110万円の基礎控除額を超えていると、贈与税が課税されます。

ただし、上記の贈与税の時効が成立していれば、贈与税は課税されません。

相続時精算課税贈与は相続の時にどう取り扱われる?

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4103 相続時精算課税の選択
概要
特定贈与者である父母または祖父母などが亡くなった時の相続税の計算上、相続財産の価額に相続時精算課税適用財産の贈与時の価額令和6年1月1日以後の贈与により取得した相続時精算課税適用財産については、贈与を受けた年分ごとに、その相続時精算課税適用財産の贈与時の価額の合計額から相続時精算課税に係る基礎控除額を控除した残額を加算して相続税額を計算します

上記にあるとおり、相続時精算課税贈与の場合には、令和5年以前の贈与については100%が相続税の課税対象となり、令和6年以後の贈与については基礎控除額が適用された部分を控除した残額(上記カッコ書き部分)が相続税の課税対象となります。

相続時精算課税贈与は贈与税が時効でも相続税の課税対象になる

下記の事例では、相続税の申告書が提出された後、税務署がいろいろ調べて、約10年前の無申告の贈与を把握しました。

その贈与が、相続時精算課税贈与だったのです。

最初にお話した「贈与税の時効は6年または7年」は、暦年課税贈与だけでなく、相続時精算課税贈与も対象の話です。

では、約10年前の相続時精算課税贈与は時効となり、相続税の課税対象にもならないのでしょうか?

出典:TAINS(Z888-2731)(一部抜粋加工)
令和7年1月16日判決
原告らは、本件借地権相当額の贈与に係る贈与税に対する更正決定等の除斥期間は既に経過していたから、同贈与税について課税当局による課税権限の行使は不可能であり、本件借地権相当額は、相続税の課税価格に加算することができない旨主張する。しかし、相続税法21条の15は、相続税の課税価格に加算される相続時精算課税適用財産の範囲について、相続時精算課税制度の適用を受ける財産のうち「当該取得の日の属する年分の贈与税の課税価格計算の基礎に算入されるもの」と規定するにとどまり、これを超えて、納税者の申告や税務署長の更正決定等により贈与税の課税価格に算入されたものとは規定していない。そのほか、同法の規定や本件全証拠によっても、原告らの主張を裏付ける規定や見解は見当たらない。したがって、原告らの上記主張は採用することができない。

贈与税の時効が成立していても、贈与税の課税対象になるものであれば、相続税の課税対象になる、としています。

贈与税の時効が成立すると、税務署は贈与税を課税することができないのですが、相続が発生した時に相続税を課税することができる、ということです。

想う相続税理士

税務署が、特定贈与者のご存命中に、過去の無申告の相続時精算課税贈与を把握した場合、贈与税の時効が成立していたら、税務署はその時点では贈与税を課税できませんが、特定贈与者が亡くなるまで待てば相続税が課税できる、ということになります。