【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

住宅取得等資金じゃなくても60歳未満で相続時精算課税贈与ができる場合がある

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続時精算課税制度の住宅取得等資金バージョンを適用した場合における、その他の贈与に対する課税への影響について、お話します。


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意外と知られていない住宅取得等資金バージョン

住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例は土地取得のみでもOK?

上記の記事では、次のようなことをお話しました。

  1. 贈与税の課税方法には、「暦年課税制度」と「相続時精算課税制度」がある
  2. 相続時精算課税制度は、原則として「60歳以上」の父母または祖父母などからの贈与であることが要件
  3. しかし、住宅取得等資金バージョンの相続時精算課税制度(「住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例」)であれば、「60歳以上」という要件が「撤廃」される

こんな場合の贈与税の課税方法はどうなる?

令和7年(の1月1日)において、50歳のAさんは、長男であるBさんに、上記の「住宅取得等資金バージョンの相続時精算課税制度」を適用して現金(住宅取得等資金)を贈与しました。

令和8年(の1月1日)において、51歳のAさんは、長男であるBさんに、財産(住宅取得等資金以外の一般の財産)を贈与しました。

この令和8年の贈与は、「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」のどちらが適用されるのでしょうか?

Aさんは、まだ(1月1日において)60歳になっていません。

翌年以降はノーマルバージョンの相続時精算課税適用者になる

租税特別措置法(一部抜粋)
第70条の3 特定の贈与者から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の特例
2 前項において準用する相続税法第21条の9第2項の届出書を提出した者については同条第3項の規定の適用を受ける財産を取得した同条第5項に規定する相続時精算課税適用者と、住宅取得等資金の贈与をした者については同条第3項の規定の適用を受ける財産の贈与をした同条第5項に規定する特定贈与者とそれぞれみなして、同法その他相続税又は贈与税に関する法令の規定を適用する。

住宅取得等資金バージョンで相続時精算課税制度を選択すると、ノーマルバージョンの「特定贈与者」「相続時精算課税適用者」の関係とみなされるのです。

つまり、上記の令和8年の贈与は、「相続時精算課税制度」が適用されます。

(1月1日において)51歳(60歳未満)なのに、堂々とノーマルバージョンの相続時精算課税が適用できてしまうのです。

通達においても、その取扱いが明らかにされています。

想う相続税理士秘書

租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
70の3-4 住宅取得等資金を贈与により取得した年分以降に財産の贈与を受けた場合の取扱い
措置法第70条の3第1項の規定の適用を受けた者が、住宅取得等資金を贈与により取得した年分以降に当該住宅取得等資金の贈与をした者から財産の贈与を受けた場合には、当該財産の贈与をした者が当該贈与をした年の1月1日において60歳未満であっても、当該財産については相続時精算課税の適用があることに留意する。

翌年だけではなくその年の一般贈与も相続時精算課税制度が適用される!

(注) 同一の者から同一年中に住宅取得等資金の贈与とそれ以外の財産の贈与があった場合において、当該住宅取得等資金以外の財産の贈与が当該住宅取得等資金の贈与前にあったとしても、当該住宅取得等資金について同項の規定の適用を受けるとき(70の3-3の2参照)には、当該住宅取得等資金以外の財産についても相続時精算課税が適用されるのであるから留意する。

上記の令和7年(の1月1日)において50歳のAさんが、長男であるBさんに住宅取得等資金以外の一般の財産の贈与をした場合、その贈与にも相続時精算課税制度が適用されます。

(1月1日において)50歳(60歳未満)なのに、堂々とノーマルバージョンの相続時精算課税が適用できてしまうのです。

想う相続税理士

養子縁組をした場合には、下記の記事にあるように、同年中の同人からの贈与について、「暦年課税制度」「相続時精算課税制度」のダブル適用が起こり得ます。
同一年中に同じ贈与者からの贈与について合計220万円の基礎控除額を適用できる場合とは?