相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続を放棄した相続人がいたり、遺言により特定の方が相続財産を取得することになった場合の、相続税申告上の留意点について、お話します。
相続放棄をしても非課税枠は変わらない
相続税の計算には、「遺産に係る基礎控除額」という「相続税の非課税枠」があり、
3,000万円+600万円×法定相続人の数
で算出されます。
この「法定相続人の数」は、「相続の放棄があった場合には、その放棄がなかったものとした場合における相続人の数」です。
Aさんが亡くなり、相続人は兄弟姉妹のBさん・Cさん・Dさん・Eさんの4人です。
Cさん・Dさん・Eさんが相続放棄をした場合、Aさんの財産はBさんが全て相続することになります。
この場合、遺産に係る基礎控除額は、
3,000万円+600万円×4人=5,400万円
です。
Bさんが1人で全財産を相続しますが、「法定相続人の数」は4人なので、相続税の非課税枠は4人分です。
相続放棄をすると相続人が増えることもあるが・・・
Fさんが亡くなり、相続人は妻Gさん・子Hさんの2人だったのですが、子Hさんが相続放棄をしました。
Fさんのご両親Iさん・Jさんはご健在です。
この場合、子Hさんが相続放棄したことにより(第1順位の唯一の相続人である子Hさんが相続放棄したことにより)、相続人はGさん・Iさん・Jさんの3人となります。
相続人は3人ですが、「法定相続人の数」は2人なので、相続税の非課税枠は2人分です。
遺言で特定の方が全財産を取得した場合
上記の「Aさんが亡くなり、相続人は兄弟姉妹のBさん・Cさん・Dさん・Eさんの4人」の場合に、Aさんが「近くに住む親族のKさんに全財産を遺贈する(遺言で渡す)」という遺言を作成していたとします。
この場合、兄弟姉妹には「遺留分」が無いため、Kさんは遺言のとおりに全財産を取得することができます。
そして、Kさんが1人で全財産を相続しますが、「法定相続人の数」は4人なので、相続税の非課税枠は4人分です。
想う相続税理士
全体が1億円だとすると、4等分した2,500万円に対して相続税の税率を掛け、それを合計します。
相続税の税率は「超過累進税率」であるため、金額に応じて税率もどんどん高くなっていくのですが、税率を掛けるのは「分けた(4等分した)後の金額」であることから、「法定相続人の数」が多いと、「分けた(4等分した)後の金額」が小さくなるため、適用される税率も低くなり、相続税も安くなります。