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遺留分侵害額の請求に対して相続した不動産を渡した場合の「譲渡所得の収入金額」

相続税専門税理士の富山です。

遺留分侵害額の請求に対して相続した不動産を渡したら所得税の確定申告の対象になる

上記の記事では、遺言で財産を取得した方が、相続人の方から遺留分侵害額の請求を受けた際に、相続した不動産を譲り渡すと、それは不動産を売却したことになり、その売却により儲け(譲渡所得)が発生している場合、確定申告をして所得税を納めなければならない、とお話しました。

今回は、その確定申告をする際の「譲渡所得の収入金額」について、お話します。

下記の記事もご覧ください。

想う相続税理士秘書

遺留分侵害額の請求に対して相続した土地を渡した場合の特例の適用と次の譲渡の注意点

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いくらで売却したことになる?

(上記の記事のおさらいになりますが)二女Cさんから遺留分侵害額の請求をされた長女Bさんが、その支払いをするためのお金がないため、お金の代わりに父Aさんから相続した不動産(土地D)を二女Cさんに渡した場合、税務上、それは不動産の譲渡に該当する(譲渡所得課税の対象になる)とお話しました。

この場合、長女Bさんは二女Cさんに土地Dをいくらで売ったことになるのでしょうか(「譲渡所得の収入金額」はいくらになるのでしょうか)?

所得税基本通達(一部抜粋加工)
33-1の6 遺留分侵害額の請求に基づく金銭の支払に代えて行う資産の移転
民法第1046条第1項《遺留分侵害額の請求》の規定による遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求があった場合において、金銭の支払に代えて、その債務の全部又は一部の履行として資産(当該遺留分侵害額に相当する金銭の支払請求の基因となった遺贈又は贈与により取得したものを含む。)の移転があったときは、その履行をした者は、原則として、その履行があった時においてその履行により消滅した債務の額に相当する価額により当該資産を譲渡したこととなる。

「譲渡所得の収入金額」「履行により消滅した債務の額に相当する価額」です。

履行されない部分があったらどうなる?

上記の通達では、
「譲渡所得の収入金額」=「遺留分侵害額請求金額」
とは言っていません。

長女Bさんが二女Cさんに対して負っている遺留分相当額の金銭支払債務がすべて履行されて消滅したのであれば、
「履行により消滅した債務の額に相当する価額」=「遺留分侵害額請求金額」
なので、
「譲渡所得の収入金額」=「遺留分侵害額請求金額」
となるのですが、そのようにならない場合も考えられます。

例えば、遺留分侵害額が5,000万円であるのに対して、長女Bさんが二女Cさんに譲り渡した土地Dの時価が3,000万円である、というような場合です。

この場合、長女Bさんは二女Cさんに対して、5,000万円支払わなければならない(失うことになる)ところ、3,000万円相当の財産を譲り渡す(失う)ことで済んでいます。

長女Bさんが二女Cさんに「2,000万円マケてもらっている」ということになります。

ということは、2,000万円分「トク」していると考えられます。

長女Bさんは、二女Cさんから2,000万円分の経済的利益を受けている、つまり、贈与を受けている、ということになり、贈与税が課税されるリスクがあるものと思われます。

想う相続税理士

長女Bさんは、「二女Cさんに対して負っている遺留分相当額の金銭支払債務」を免除してもらっている(「債務免除」を受けている)、二女Cさん側から見ると、長女Bさんに対して債権を有しているが、それを放棄した(「債権放棄」をした)ということになるものと思われます。

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4424 債務免除等を受けた場合
対象税目
贈与税
概要
対価を支払わないで、または著しく低い対価で債務の免除、引受けまたは第三者のためにする債務の弁済による利益を受けた場合には、その利益を受けた人が、債務免除等が行われた時にその債務免除等に係る債務の金額を、その債務免除等をした人から贈与により取得したものとみなされます