【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

借地権の返還を無償で受けると贈与税が課税される?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、借地権の返還について、お話します。


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借地権の返還は譲渡所得課税

所得税基本通達(一部抜粋加工)
59-5 借地権等の設定及び借地の無償返還
法第59条第1項に規定する「譲渡所得の基因となる資産の移転」には、借地権等の設定は含まれないのであるが、借地の返還は、その返還が次に掲げるような理由に基づくものである場合を除き、これに含まれる

地主(個人)が持っている土地から、借地人(個人)が出ていくとします。

通常、出て行ってもらう場合には「立退料」を支払わなければなりません。

これは、借地人が借地権を地主に譲渡して、その対価として立退料をもらっている、と考えられるため、上記にあるとおり、原則として(一定の場合を除き)、譲渡所得の対象となります。

借地権を無償で返還されると贈与税課税

借地人が立退料を受け取らずに出て行ってくれた場合、どうなるでしょうか?

地主から見ると、立退料を支払わずに出て行ってもらえた、ということは、その分トクしています。

つまり、贈与があったものとみなされます。

借地権が無償で返還されても贈与税が課税されない場合

出典:TAINS(相続事例001356)(一部抜粋加工)
相事例1356 借地権の返還を受けた場合の課税関係

〔問〕 甲は、長い間、乙に土地を安い地代で貸していた。乙は、建物が古くなったことと、子供と同居することになったことにより借地上の建物が不要となったので、その借地権の返還を申し出てきた。甲は、この借地権の返還を無償で受けようと考えているが、どのような課税関係が生じるか。

〔答〕 借地権の消滅に伴う返還であれば課税関係は生じない。
借地権の取引慣行のある地域において、地主が貸地を借地人から返還してもらう場合には、通常、当事者間で借地権の価額に見合う立退料の授受があることから、税務上、双方における課税関係が問題になる。
つまり、当事者の合意に基づく借地権の返還は、実質的には借地人から地主への借地権の譲渡と考えられるが、借地権という財産権は、あくまでも当事者間の契約関係の上に成り立つ権利であるから、借地契約の内容や残存期間、建物の状況等の事実関係によって、その権利の強弱に差があり、交換価値にも相当の幅があると考えられ、事情によっては、借地人の側から権利の主張がされず、無償で借地権が返還されることも十分ありうる。
このようなことから、税務上も、借地権の返還に際して常に適正な立退料を授受すべきであると断定することはできないのであり、たとえ特殊関係者間で「無償返還」が行われた場合であっても、次のような「相当の理由」があれば、これが認められることとされている。〔所基通59-5,法基通13-1-14参照〕
(1) 借地権等の設定に係る契約書において、将来借地を無償で返還することが定められていること。
(2) 土地の使用の目的が、単に物品置場、駐車場等として土地を更地のまま使用し、又は仮営業所、仮店舗等の簡易な建物の敷地として使用していたものであること。
(3) 借地上の建物が著しく老朽化したことその他これに類する事由により、借地権が消滅し、又はこれを存続させることが困難であると認められる事情が生じたこと。

したがって、借地権は契約された期間の満了又は建物の朽廃した時に消滅することになり、借地人がその借地の目的を達したとして、その借地権の消滅を理由にその借地を、地主に返還した場合には、それが借地権の消滅に伴うものと認められるときは、たとえ金銭の授受がなかったとしても、贈与税の課税関係は生じないものと考えられる。
ただし、借地期間も存続しており、建物も朽廃していない場合にその借地を無償返還したという場合においては、当然にその借地権が贈与されたこととなり、贈与税の課税問題が生じる。

上記の青太字に該当する場合には、無償の返還であったとしても、贈与税は課税されません。

想う相続税理士

「借地権の価値があるかどうか」で考えると分かりやすいと思われます。