【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

借金の保証人が肩代わりのために土地を売却しお金を回収できなかった場合

相続税専門税理士の富山です。

今回は、保証債務に関する税務上の取扱いについて、お話します。


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保証債務は原則として債務控除の対象外

相続人等の一定の方が、相続で財産を取得するとともに、亡くなった方の債務を負担する場合には、財産の金額からその債務の金額を控除して相続税を計算します(「債務控除」と言います)。

ただし、債務は債務でも、保証債務は原則として債務控除の対象とはなりません。

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4126 相続財産から控除できる債務
保証債務の債務控除
Q
死亡した父が他人の借入金の保証人になっているのですが、その保証債務は債務控除の対象となりますか。
A
原則として、保証債務は債務控除の対象となりません。これは、保証債務は、保証債務を履行した場合は求償権の行使により補てんされるという性質を有するため、確実な債務とはいえないからです。

AさんがBさんの借金の保証人になっていて、Bさんが借金を返済できなくなったことにより、代わりにAさんが借金を返済したとしても、それはBさんの借金なので、「俺が代わりに立て替えて払ってやったんだから、その立替分を精算しろ!」というような感じのことをAさんはBさんに言えるのです。

つまり、借金を肩代わりしても、AさんはBさんから回収できるのです。

つまり、理論上、保証債務は、最終的には負担しなくてもよいはずの債務なのです。

したがって、相続税の計算においても、原則として債務控除の対象にはならないのです。

ただし、主たる債務者が弁済不能の状態にあるため、保証人がその債務を履行しなければならない場合で、かつ、主たる債務者に求償権を行使しても弁済を受ける見込みのない場合には、その弁済不能部分の金額については、債務控除の対象となります。

とはいえ、Bさんに支払能力がなければ、Aさんが回収しようにも回収できないので、Aさんが負担することになってしまいます。

このような状況の保証債務だった場合には、Aさんが亡くなった場合、相続人等の一定の方が負担することになってしまうので、債務控除の対象となります(ただし、事実確認を厳密にする必要があります)。

肩代わりのために土地等を売却して回収できなかった場合

上記は相続税の話ですが、今度は所得税の話です。

AさんがBさんの借金を肩代わりしようとしたのですが、お金がなく、自分の所有しているC土地を売って、その売却代金を返済に充てました。

しかし、Bさんに支払能力がなかったため、Bさんから回収できませんでした。

このような場合には、その土地を売ったことにより発生する譲渡所得(確定申告の対象となる「儲け」)は、「なかった」ものとみなされます。

所得税法(一部抜粋)
第64条 資産の譲渡代金が回収不能となつた場合等の所得計算の特例
2 保証債務を履行するため資産(第33条第2項第1号(譲渡所得に含まれない所得)の規定に該当するものを除く。)の譲渡(同条第1項に規定する政令で定める行為を含む。)があつた場合において、その履行に伴う求償権の全部又は一部を行使することができないこととなつたときは、その行使することができないこととなつた金額(不動産所得の金額、事業所得の金額又は山林所得の金額の計算上必要経費に算入される金額を除く。)を前項に規定する回収することができないこととなつた金額とみなして、同項の規定を適用する。

上記の「前項」の後半部分は下記のとおりです。

想う相続税理士秘書

その回収することができないこととなつた金額又は返還すべきこととなつた金額に対応する部分の金額は、当該各種所得の金額の計算上、なかつたものとみなす。

肩代わりのために借金をしてその後に土地等を売却して回収できなかった場合

AさんがBさんの借金を肩代わりしようとしたのですが、お金がなく、自分の所有しているC土地を売って、その売却代金を返済に充てようとしました。

しかし、C土地がなかなか売れませんでした。

そこで、Aさんは銀行から借金をして、Bさんの借金を返済しました。

その後、C土地が売却できたので、その売却代金を銀行からの借金の返済に充てました。

この場合にもまた、Bさんに支払能力がなかったため、Bさんから回収できませんでした。

このようなケースでも、そのC土地の売却が実質的に借金の肩代わりのためであると認められるときは、上記の「その土地を売ったことにより発生する譲渡所得を『なかった』ものとみなす」取扱いを適用することができます。

所得税基本通達(一部抜粋)
64-5 借入金で保証債務を履行した後に資産の譲渡があった場合
保証債務の履行を借入金で行い、その借入金(その借入金に係る利子を除く。)を返済するために資産の譲渡があった場合においても、当該資産の譲渡が実質的に保証債務を履行するためのものであると認められるときは、法第64条第2項に規定する「保証債務を履行するため資産の譲渡があった場合」に該当するものとする。
被相続人が借入金で保証債務を履行した後にその借入金を承継した相続人がその借入金(その借入金の利子を除く。)を返済するために資産を譲渡した場合も、同様とする。
(注)借入金を返済するための資産の譲渡が保証債務を履行した日からおおむね1年以内に行われているときは、実質的に保証債務を履行するために資産の譲渡があったものとして差し支えない。

想う相続税理士

上記の(注)にあるとおり、おおむね1年以内に売却していれば、実質的に借金の肩代わりのための売却であると認められます。