相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続財産・贈与財産が災害で被害を受けた場合に適用できる「災害減免措置」の基本と、申告前後で異なる取扱い、計算・手続きの道筋について、お話します。
まず「対象になるか」を落ち着いて判定する
災害で被害を受けた財産がある場合でも、いきなり税額が軽くなる訳ではありません。
最初の関門は「対象判定」です。
「相続財産等」(相続や遺贈、贈与により取得した財産)のうち、「被害を受けた部分の価額」が、課税価格の計算の基礎となった価額全体に対して、10分の1以上を占めていることが求められます。
ここでいう「被害を受けた部分の価額」は、財産ごとに被害の程度(被害割合)を掛け合わせて求めます。
被害割合は、被害額(保険金・共済金・損害賠償金等の補填後)と被害直前の時価が分かるときはその比で、分からないときは、建物・家庭用財産・車両などの区分に応じた目安(被害割合表による被害割合)等により求めるのが原則です。
よくある落とし穴が「保険金の扱い」です。
補填を受けた分は被害額から控除して被害割合を出すため、保険の有無で減免の可否や幅が変わります。
また、課税価格の計算で小規模宅地等の特例などを適用している場合は、適用「後」の価額を基礎に計算する点も注意が必要です。
申告期限「前」と「後」で異なる効果
対象判定をクリアしたら、次は「いつ被害を受けたか」で分かれ道です。
相続税・贈与税の申告期限「前」に被害を受けた場合は、課税価格に算入する価額を、相続財産等の価額から「被害を受けた部分の価額」を差し引いて計算し直します。
つまり、課税の土台(課税価格)が減る方向に作用します。
これに対して、申告期限「後」に被害が生じた場合は、「被害のあった日以後に納付すべき税額」のうち、一定割合に相当する金額が免除されます。
延納中の税額や、納税猶予(農地等)の対象税額などが典型例で、既に納付済の分や延滞税・加算税は含まないことに注意が必要です。
この場合、申告期限が延長されることにも注意が必要です。
国税通則法の規定により申告期限が延長された場合には、「延長後の期限」を基準に「前か後か」を判定します。
書類による手続きが必要
申告期限前に災害により被害を受けた場合には、「災害減免法第6条の規定による相続税・贈与税の財産の価額の計算明細書」に被害の状況や被害を受けた部分の価額等を記載し、相続税等の申告書等に添付して提出する必要があります。
申告期限後に災害により被害を受けた場合には、「災害減免法第4条の規定による相続税・贈与税の免除承認申請書」に被害の状況や被害を受けた部分の価額等を記載し、災害のやんだ日から2ヶ月以内に税務署に提出する必要があります。
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