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遺言無効確認訴訟において遺言が無効であるという判決が確定した場合

相続税専門税理士の富山です。

今回は、遺言に従って相続税の申告・納付をした後、その遺言が無効であるということになった場合の対応について、お話します。


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日付を間違えた自筆証書遺言は無効?

遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されている自筆証書遺言の有効性が争点となった判決があります。

出典:TAINS(Z999-5426)(一部抜粋加工)
令和3年1月18日判決

結論は、

自筆証書遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではない

というものでした。

自筆証書によって遺言をするには、真実遺言が成立した日の日付を記載しなければならないと解されるところ、前記事実関係の下においては、本件遺言が成立した日は、押印がされて本件遺言が完成した平成27年5月10日というべきであり、本件遺言書には、同日の日付を記載しなければならなかったにもかかわらず、これと相違する日付が記載されていることになる。

しかしながら、民法968条1項が、自筆証書遺言の方式として、遺言の全文、日付及び氏名の自書並びに押印を要するとした趣旨は、遺言者の真意を確保すること等にあるところ、必要以上に遺言の方式を厳格に解するときは、かえって遺言者の真意の実現を阻害するおそれがある。

したがって、Aが、入院中の平成27年4月13日に本件遺言の全文、同日の日付及び氏名を自書し、退院して9日後の同年5月10日に押印したなどの本件の事実関係の下では、本件遺言書に真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されているからといって直ちに本件遺言が無効となるものではないというべきである。

遺言が無効だったら相続税の申告はどうなる?

上記の事例は、「この自筆証書遺言は日付を間違えているけれども『有効』」という結論でした。

もし、この自筆証書遺言の内容に従って相続税の申告をしていて、上記の遺言無効確認訴訟の結論が「この自筆証書遺言は日付を間違えているから『無効』」という内容だったら、どうなるのでしょうか?

父Aさんが亡くなり、相続人が長女Bさん・二女Cさんの2人で、「全財産を長女Bさんに相続させる」という父Aさんの遺言があったとします。

長女Bさんがその遺言に従って全財産を自分が相続するものとして相続税の申告・納付をした後、「この自筆証書遺言は日付を間違えているから『無効』」という判決が下されたとします。

長女Bさんは全財産を相続できないのに、全財産分の相続税を申告・納付しています。

相続税を払い過ぎていることになります。

このような場合には、更正の請求により、相続税の還付を受けることができます。

相続税法(一部抜粋)
第32条 更正の請求の特則
相続税又は贈与税について申告書を提出した者又は決定を受けた者は、次の各号のいずれかに該当する事由により当該申告又は決定に係る課税価格及び相続税額又は贈与税額が過大となつたときは、当該各号に規定する事由が生じたことを知つた日の翌日から4月以内に限り、納税地の所轄税務署長に対し、その課税価格及び相続税額又は贈与税額につき更正の請求をすることができる。
六 前各号に規定する事由に準ずるものとして政令で定める事由が生じたこと。

相続税法施行令(一部抜粋)
第8条 更正の請求の対象となる事由
2 法第32条第1項第6号に規定する政令で定める事由は、次に掲げる事由とする。
一 相続若しくは遺贈又は贈与により取得した財産についての権利の帰属に関する訴えについての判決があつたこと。

想う相続税理士

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