【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

遺留分侵害額の請求に対して相続した土地を渡した場合の特例の適用と次の譲渡の注意点

相続税専門税理士の富山です。

遺留分侵害額の請求に対して相続した不動産を渡したら所得税の確定申告の対象になる

上記の記事では、遺言で財産を取得した方が、相続人の方から遺留分侵害額の請求を受けた際に、相続した土地を譲り渡すと、それは土地を売却したことになり、その売却による儲けは所得税の課税対象(譲渡所得)になる、ということをお話しました。

また、

遺留分侵害額の請求に対して相続した不動産を渡した場合の「譲渡所得の収入金額」

上記の記事では、その譲渡所得を計算する際の「譲渡所得の収入金額」について、お話しました。

今回は、所得税の確定申告に関するその他の注意点について、お話します。


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所得税の確定申告で「取得費加算の特例」を忘れるな!

(上記の記事のおさらいになりますが)二女Cさんから遺留分侵害額の請求をされた長女Bさんが、その支払いをするためのお金がないため、お金の代わりに父Aさんから相続した不動産(土地D)を二女Cさんに渡した場合、税務上、それは不動産の譲渡に該当します(譲渡所得が発生した場合には、所得税の確定申告が必要です)。

この場合、その譲渡が、「相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで」にされている場合には、その所得税の確定申告をする際、相続税の一部を経費にすることができます(「取得費加算の特例」と言います)。

土地Dを二女Cさんに渡したとしても、それは、遺産分けで渡したわけではなく、二女Cさんに対して負っている遺留分相当額の金銭支払債務を代物弁済で支払う際、土地Dを活用した、ということですから、あくまでも土地Dは長女Bさんが相続したものです。

相続で取得した土地なのですから、上記の期間内(3年を経過する日まで)に譲渡した場合には、「取得費加算の特例」を適用することができます。

代物弁済で取得した土地を売却した時の取得費はどうなる?

上記でお話したとおり、長女Bさんは二女Cさんに土地Dを売却したことになります。

逆に言うと、二女Cさんは長女Bさんから土地Dを購入したことになります。

二女Cさんが、長女Bさんから譲り受けた土地Dを、E株式会社に売却したとします。

今度は、二女Cさんが確定申告をする番です。

この場合、二女Cさんの譲渡所得を計算する際の「取得費(購入代金)」はいくらになるのでしょうか?

遺留分侵害額の請求に対して相続した不動産を渡した場合の「譲渡所得の収入金額」

上記の記事で、「遺留分侵害額が5,000万円であるのに対して、長女Bさんが二女Cさんに譲り渡した土地Dの時価が3,000万円である」というパターンのお話をしました。

このような場合、差額の2,000万円については、長女Bさんが「債務免除を受けた」とみなされる可能性があり、贈与税が課税されるリスクがあることもお伝えしました。

つまり、二女Cさんは、長女Bさんから土地Dを3,000万円で購入した、ということになります。

ただし、実際には購入代金(債務)と、二女Cさんが有していた遺留分侵害額請求権(債権)を相殺しており、金銭のやり取りは行われていません。

それでもなお、遺留分侵害額請求権(債権)のうち2,000万円分が残っているため、その部分については「譲歩した(マケてあげた)」ものと考えられることから、長女Bさんに対する贈与があったと認定される可能性があるのです。

想う相続税理士

長女Bさんの所得税の確定申告の際の「取得費」は、父Aさんの取得費を引き継ぐことができます。