相続税専門税理士の富山です。
今回は、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しても、ダメなものはダメ、ということについて、お話します。
相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。
このうち、「(1)特定事業用宅地等」に該当すれば、400㎡までの部分について、評価額を8割引きで申告することができます(1,000万円の評価額であれば200万円で申告)。
遺産分割(取得者)が決まらなかった場合の対応方法
小規模宅地等の特例には、各パターン・ケースごとに「取得者」の要件があります。
したがって、相続税の申告期限までに遺産分割の話し合いがまとまらなかったため、小規模宅地等の特例を適用しようとする土地を誰が取得するのか(取得者が)決まっていない場合には、小規模宅地等の特例を適用することはできません。
このような場合には、「申告期限後3年以内の分割見込書」を相続税の申告書と一緒に提出しておき、相続税の申告書の提出期限から3年以内に取得者が決まったときに、一定の手続き(更正の請求等)をすることにより、小規模宅地等の特例を適用することができます。
「分割見込書を提出しておけば後は遺産分割さえ決まればOK」ではない!
「当初申告では取得者が決まらなかったため、小規模宅地等の特例を適用できなかったけど、分割見込書を提出しておいたから、後は3年以内に分割を決めればOKだ」と考えてはいけません。
分割見込書を提出してホッとすると失敗します。
小規模宅地等の特例には、他にも要件があります。
上記の「(1)特定事業用宅地等」であれば、亡くなった方の事業の用に供されていた土地について適用する場合、適用を受ける方が「その土地の上で営まれていた亡くなった方の事業を相続税の申告期限までに引き継ぎ、かつ、その申告期限までその事業を営んでいること」が要件となります。
つまり、遺産分割が決まっていなくても(その土地が自分のものになっていなくても)、適用を受ける方が亡くなった方の事業を引き継いでいる必要があるのです。
遺産分割が決まってから事業を引き継げばいい、と勘違いして、亡くなった方の事業が休業中(事業停止状態)のまま、相続税の申告期限を迎えてしまうと、3年以内に遺産分割が決まっても、小規模宅地等の特例の適用は受けられません。
想う相続税理士