【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

定期借地権設定契約により土地を借りて家を建てた場合の住宅取得等資金の非課税贈与特例

相続税専門税理士の富山です。

今回は、土地を購入して家を建てるのではなく、定期借地権設定契約により土地を借りて家を建てた場合の住宅取得等資金の非課税贈与特例の適用について、お話します。


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父母や祖父母などからの住宅取得等資金の非課税贈与特例

国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4508 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の非課税
概要
令和6年1月1日から令和8年12月31日までの間に、父母や祖父母など直系尊属からの贈与により、自己の居住の用に供する住宅用の家屋の新築、取得または増改築等(以下「新築等」といいます。)の対価に充てるための金銭(以下「住宅取得等資金」といいます。)を取得した場合において、一定の要件を満たすときは、次の非課税限度額までの金額について、贈与税が非課税となります(以下「非課税の特例」といいます。)。
非課税限度額
贈与を受けた人ごとに省エネ等住宅の場合には1,000万円まで、それ以外の住宅の場合には500万円までの住宅取得等資金の贈与が非課税となります。

父母や祖父母などから住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば、最大で1,000万円または500万円が贈与税非課税となります。

贈与資金で土地を取得しても非課税特例は適用できない?

上記の「概要」を見ると、「住宅用の『家屋』の新築、取得または増改築等の対価に充てるための金銭」を贈与により取得した場合、と書かれていますが、「土地等」(家屋の敷地)の取得に充てるための金銭も対象となります。

住宅用の家屋の新築、取得または増改築等の要件
「住宅用の家屋の新築」には、その新築とともにするその敷地の用に供される土地等または住宅の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含み、「住宅用の家屋の取得または増改築等」には、その住宅の取得または増改築等とともにするその敷地の用に供される土地等の取得を含みます。

条文を見てみると、

租税特別措置法(一部抜粋加工)
第70条の2 直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合の贈与税の非課税
これらの住宅用家屋の新築若しくは取得とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは土地の上に存する権利(以下この項及び次項において「土地等」という。)の取得(当該住宅用家屋の新築に先行してするその敷地の用に供されることとなる土地等の取得を含む。同項第5号イにおいて同じ。)のための対価に充てて当該住宅用家屋の新築

「土地等」とは、「土地」「土地の上に存する権利」であることが分かります。

定期借地権設定契約により土地を借りて家を建てる場合、その契約に際して、地主の方に保証金を支払ったりして土地を借りるのですが、この保証金に充てるための金銭を父母や祖父母などから贈与により取得したときは、その金銭が「土地の上に存する権利」の取得のための対価に充てられたものとして、非課税特例が適用できるのでしょうか?

保証金は将来返ってくるので取得のための対価ではない!

国税庁HP・質疑応答事例(一部抜粋)
受贈した金銭を一般定期借地権に係る権利金又は保証金に充てた場合の住宅取得等資金の贈与の特例の適用の可否
【照会要旨】
一般定期借地権付の住宅用家屋の新築等をする場合において、一般定期借地権に係る権利金又は保証金の支払いに充てるために贈与を受けた金銭については、租税特別措置法第70条の2第2項又は第70条の3第3項に規定する住宅取得等資金に当たりますか。
【回答要旨】
贈与により取得した金銭を一般定期借地権に係る権利金に充てた場合には、住宅取得等資金に当たりますが、保証金に充てた場合には、住宅取得等資金に当たりません。
ただし、保証金が無利息又は基準年利率に満たない利息によるものであるときは、その金額のうち、定期借地権の設定時における保証金の返還請求権の価額に相当する部分以外の部分として、次の算式により計算した金額に相当する部分については、住宅取得等資金に当たるものとして差し支えありません。

借地契約終了時に、「権利金」は返ってきませんが、「保証金」は返ってきます。

ですから、「権利金」部分の支払いは、「土地の上に存する権利」の取得のための対価の支払いと考えられますが、「保証金」部分の支払いは、地主さんに「預けている」だけですので(借地契約終了時に返ってきます)、「土地の上に存する権利」の取得のための対価の支払いには該当しません。

ただし、地主さんに保証金を支払っている(お金を預けている)のに利息がもらえない、または、ちょっとしかもらえない、という場合には、支払った保証金の中に、理論上「地主さんに帰属する部分(地主さんのものになる部分)」が発生している、と考えられます。

その部分は、「土地の上に存する権利」の取得のための対価の支払いと考えられますので、住宅取得等資金の非課税贈与の特例を適用することができます。

想う相続税理士

「地主さんに帰属する部分」は、定期借地権の設定期間に応じる「基準年利率」「複利現価率」を使用して計算します。