【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続における債務の承継と所得税及び贈与税の課税との関係に注意

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続における債務の承継が、所得税や贈与税の課税に与える影響について、お話します。


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債務の承継は債権者の承諾・承認が必要

相続税専門税理士㊙カード69【債務の承継】

上記の記事でもお話したとおり、亡くなった方の借入金などの債務については、

  1. 【原則】法定相続分に応じて承継する
  2. 【例外】債権者の承諾・承認があれば承継内容を遺産分割協議により決定することができる

という取扱いになります。

事業用資産を取得するための借入金の場合

所得税基本通達(一部抜粋)
37-27 業務用資産の取得のために要した借入金の利子
業務を営んでいる者が当該業務の用に供する資産(37-28において「業務の用に供される資産」という。)の取得のために借り入れた資金の利子は、当該業務に係る各種所得の金額の計算上必要経費に算入する。

相続税専門税理士㊙カード69【債務の承継】

上記の記事で、

例えば、相続人が長女と二女の2人で、亡くなった方に2,000万円の銀行借入金があったとする

遺産分割協議により、長女がこの借入金(全額)を承継することを決めたが、銀行の承諾・承認を得ていない場合、上記の「免責的債務引受」にはなっていないから、銀行は二女に対して1,000万円(2,000万円×二女の法定相続分1/2)の返済を請求することができる

遺産分割協議により、長女が借入金全額を負担する、と決めたのに、二女が銀行から1,000万円(2,000万円×二女の法定相続分1/2)の返済を請求されるのは話が違うから、二女は長女に対して1,000万円の求償権を取得することになる

というお話をしましたが、この銀行借入金が、亡くなった方が賃貸アパートを取得するために借り入れたもので、長女がその賃貸アパートを相続する場合、長女が銀行借入金を承継することを銀行が承諾・承認すれば、その銀行借入金に係る支払利子は、長女の確定申告において全額経費にすることができます。

しかし、銀行が承諾・承認しなかった場合には、二女が1,000万円(2,000万円×法定相続分1/2)の銀行借入金を返済することになります。

その二女が返済する1,000万円の銀行借入金に係る支払利子は、二女の確定申告において経費にすることはできません。

長女は、自分が返済する1,000万円(2,000万円×法定相続分1/2)の銀行借入金に係る支払利子しか、確定申告において経費にすることはできません。

長女が二女の分の支払利子を負担しても、その負担分を長女の確定申告において経費にすることはできません。

遺産分割協議のとおりに負担しないと贈与が発生する

上記の「遺産分割協議により、長女がこの借入金(全額)を承継することを決めたが、銀行の承諾・承認を得ていない場合、上記の『免責的債務引受』にはなっていないから、銀行は二女に対して1,000万円(2,000万円×二女の法定相続分1/2)の返済を請求することができる」という展開になったことをいいことに、「銀行が正式に請求するんだからちゃんと返済してね」と長女が開き直って二女に言い放ち、二女が訳も分からずそれを認めてしまった場合、つまり、二女が長女に対する求償権を放棄してしまったら、その放棄した求償権相当額は、二女から長女への贈与に該当し、贈与税の課税対象となります。

想う相続税理士

銀行から返済を迫られる二女の立場になった時に、「自分が負担するものだ」と勘違いしないようにご注意を。

返済するのはいいのですが、返済したら、その分をちゃんと長女に請求しましょう。

負担すべきなのは、遺産分割協議で決まったとおり、長女なのですから。