【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

家族間のお金の貸し借りは成立する?贈与認定を避けるための実務ポイント

相続税専門税理士の富山です。

今回は、家族間での金銭の貸し借りが税務上「贈与」とみなされないために必要な契約・返済・資金源の確認ポイントについて、お話します。


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家族間の貸し借りが「贈与」と疑われる場面とは?

家族の間でお金を融通し合うこと自体は珍しくありません。

問題は、それが本当に「貸付(あとで返す約束のお金)」なのか、実質的は「贈与(返さなくてよいお金)」なのかという点です。

税務では形式よりも実態が重視されます。

たとえば、親から子へ1,200万円を振り込むケースを考えます。

貸付であれば返済が進むとともに、親にお金が戻ってくるはずです。

贈与なら最初に1,200万円が動いて終わりで、以後のお金の動きはありません。

見た目は最初の資金移動が同じでも、時間の経過とともに「お金が返ってきているか」「それが約束どおりか」で実態が分かれていきます。

ここでよくある誤解が、「毎月10万円を子が親の口座へ入れているから問題ない」という解釈です。

入金の形だけでは不十分で、その10万円の原資(どこから捻出したか)まで説明できないと、「親が裏で返済資金を渡しているのでは?」と疑われる余地が残ります。

収入が少ない、あるいは無収入の子が多額の返済を続けていると、特に返済能力・返済資金源について問われやすくなります。

贈与認定を避けるための必須チェックリスト

家族間の貸付を安全に進めるには、「明確な契約内容」「お金の流れ」の両面で要件をそろえることが重要です。

金銭消費貸借契約書を作成する

口頭の約束のみになるのは避けましょう。

利息を設定する

無利息だと、貸付の実態を疑われやすくなりますので、合理的な水準で利息を取り、利息分も振込等で支払事実を残します。

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利息が設定されていないと、その貸付相当額が必ず贈与認定される、という訳ではありません。

また、貸し付け相当額が贈与にならなかったとしても、利息相当額が贈与認定されるリスクがあります。

相続税法基本通達(一部抜粋)
9-10 無利子の金銭貸与等
夫と妻、親と子、祖父母と孫等特殊の関係がある者相互間で、無利子の金銭の貸与等があった場合には、それが事実上贈与であるのにかかわらず貸与の形式をとったものであるかどうかについて念査を要するのであるが、これらの特殊関係のある者間において、無償又は無利子で土地、家屋、金銭等の貸与があった場合には、法第9条に規定する利益を受けた場合に該当するものとして取り扱うものとする。ただし、その利益を受ける金額が少額である場合又は課税上弊害がないと認められる場合には、強いてこの取扱いをしなくても妨げないものとする。

返済計画を実行する

毎月の返済日と金額を決め、原則として、銀行振込で行います。

現金手渡しは避けましょう。

遅延時の取扱いも契約どおりに運用します。

返済原資を説明できる状態にしておく

給与明細や確定申告書、家計の入出金記録で、返済の根拠を示せるよう準備します。

住宅取得等で借入金を消費した場合でも、返済は「現在の収入や貯蓄」から行われるのが自然です。

通帳や明細を保存する

貸主と借主の双方で、振込記録、利息の授受、残高推移が追えるよう体系的に保管します。

第三者に見せても通る整合性を確保する

家族間だと「なあなあ」で甘くなりがちなので、第三者が見ても「これは貸付」と納得できるだけの資料と一貫性を担保してください。

これらの点に留意し、形式だけでなく実態面でも「貸付」であることを示せるようにしておきましょう。

想う相続税理士秘書

想う相続税理士

貸付は返済してこそ成立します。

資金が必要だから借り、借りたお金を使うなら、返済資金は別途用意する、ということになります。

返済原資の見通しがない貸付は、実質的に「返済されない資金の移動」と受け取られても反論が難しくなります。

結果として、贈与認定という望まない結末につながりかねませんので、ご注意を。