【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続人なら単独で相続預貯金の取引履歴の開示を金融機関に請求することができる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続開始後に、相続人が単独で、金融機関に対して、相続財産である預貯金の取引履歴(入出金の明細等)の開示請求をすることができるのか?ということについて、お話します。


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相続後に「口座の動き」を確認する意味

相続では、亡くなった方名義の預貯金が遺産の中心になることがよくあります。

遺産分けをする上で、亡くなる前後に多額の引出しや振込がある場合には、それらが「現金で保管されているのか?」「誰かに贈与されたのか?」「生活費等の正当な支出なのか?」を確かめる必要が生じます(それは、相続税の申告をする上でも必要であり、重要なポイントです)。

遺産分割の話し合いを公平に進めるためにも、客観的な取引履歴を揃えることが重要です。

この「口座の動きの把握」は、相続財産の保全と管理のための基本作業です。

相続人一人でも取引履歴の開示を請求できる?

相続が発生した場合、亡くなった方の預貯金債権は相続人の共有状態になります。

共有の財産については、「保存行為」であれば、各共有者が単独で行うことができます。

民法(現行・一部抜粋)
(共有物の管理)
第二百五十二条
5 各共有者は、前各項の規定にかかわらず、保存行為をすることができる

民法(平成28年10月13日施行・一部抜粋)
(共有物の管理)
第二百五十二条 共有物の管理に関する事項は、前条の場合を除き、各共有者の持分の価格に従い、その過半数で決する。ただし、保存行為は、各共有者がすることができる。

預貯金口座の取引履歴の開示請求は「保存行為」である

「預貯金口座の取引履歴の開示請求は『保存行為』であり、金融機関には取引履歴を開示する義務がある」とした最高裁の判決があります。

出典:TAINS(Z999-5141)(一部抜粋加工)
平成21年1月22日判決

1 本件は、被相続人である預金者が死亡し、その共同相続人の一人である被上告人が、被相続人が預金契約を締結していた信用金庫である上告人に対し、預金契約に基づき、被相続人名義の預金口座における取引経過の開示を求める事案である。
2 預金契約は、預金者が金融機関に金銭の保管を委託し、金融機関は預金者に同種、同額の金銭を返還する義務を負うことを内容とするものであるから、消費寄託の性質を有するものである。しかし、預金契約に基づいて金融機関の処理すべき事務には、委任事務ないし準委任事務(以下「委任事務等」という。)の性質を有するものも多く含まれている。
3 委任契約や準委任契約においては、受任者は委任者の求めに応じて委任事務等の処理の状況を報告すべき義務を負うが、これは、委任者にとって、委任事務等の処理状況を正確に把握するとともに、受任者の事務処理の適切さについて判断するためには、受任者から適宜上記報告を受けることが必要不可欠であるためと解される。このことは預金契約において金融機関が処理すべき事務についても同様である。したがって、金融機関は、預金契約に基づき、預金者の求めに応じて預金口座の取引経過を開示すべき義務を負うと解するのが相当である
4 そして、預金者が死亡した場合、その共同相続人の一人は、預金債権の一部を相続により取得するにとどまるが、これとは別に、共同相続人全員に帰属する預金契約上の地位に基づき、被相続人名義の預金口座についてその取引経過の開示を求める権利を単独で行使することができる(同法264条、252条ただし書)というべきであり、他の共同相続人全員の同意がないことは上記権利行使を妨げる理由となるものではない

想う相続税理士

相続人全員の合意がないと、預貯金口座の開示請求をすることはできない、なんてことはありませんので、ご注意を。

単独で動けます。