相続税専門税理士の富山です。
今回は、「特別受益」と「遺留分」について、お話します。
同じ「生前贈与」でも取扱いが違う
相続で過去の生前贈与をどう取扱うかは、「何を計算したいのか」でルールが変わります。
「遺産分割」で各相続人の取り分(具体的相続分)を決めるときに使うのが、「特別受益」の持戻しです。
一方、遺留分侵害があるかどうかを判定するために、「遺留分」の基礎財産に生前贈与を足し戻すのが、「遺留分」の計算です。
同じ「生前贈与」でも、目的が違えば、さかのぼれる期間や例外の取扱いが変わります。
「遺産分割=公平調整のための前渡し精算」の話なのか、「遺留分=最低限取り分の確保」の話なのか、の違いです。
遺産分割の特別受益は原則無制限(ただし持戻し免除に注意)
遺産分割での特別受益は、原則として期間制限なくさかのぼって持ち戻しされます。
何十年も前の贈与でも、婚姻費用・学資・独立資金・居住用不動産などが「特別受益」に当たれば、遺産に足し戻して各人の取り分を調整します。
これは、過去の前渡し分を公平に精算して、現時点での取り分を決めるためです。
ただし、亡くなった方が「持戻し免除」の意思を示していた場合は別です。
「これは前渡しにしない(持ち戻さない)」という明確な意思表示があれば、その贈与は遺産分割で持ち戻しの対象から外れます。
さらに、長期婚姻(20年以上)の配偶者に対する居住用不動産の贈与等は、持戻し免除の意思が「推定」される特例があります。
遺留分の計算は原則10年(相続人以外は原則1年だが害意があれば延長)
遺留分の計算は、2019年の民法改正でルールが明確化され、原則として「相続開始前10年以内の相続人への贈与」を足し戻します。
ここでいう10年は、遺留分の基礎財産を算定するための期間制限であり、遺産分割の特別受益とは目的が違うため、期間ルールも異なります。
また、「相続人以外」への贈与は、原則として「相続開始前1年以内」の分だけを足し戻します。
もっとも、遺留分を害することを知ってした贈与(贈与者・受贈者双方がその害意を知っていた場合)については、10年・1年を超えても足し戻しの対象となり得ます。
想う相続税理士

