【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

配偶者が相続放棄をした場合の相続及び相続税申告における留意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、配偶者が相続放棄(家庭裁判所で相続放棄の手続き)をした場合の留意点について、お話します。


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応

または はこちらから


相続放棄をするとどうなる?

民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

配偶者が相続放棄をすると(3ヶ月以内に手続きする必要があります)、相続開始時点までさかのぼって、最初から相続人ではなかったものとみなされます。

相続税の非課税枠はどうなる?

相続税の計算においては、

「3,000万円+600万円×法定相続人の数」で計算される「遺産に係る基礎控除額」
「500万円×法定相続人の数」で計算される「死亡保険金の非課税限度額」「死亡退職金の非課税限度額」
のような非課税枠がありますが、上記の「法定相続人の数」は、

相続税法(一部抜粋)
第15条 遺産に係る基礎控除
2 前項の相続人の数は、相続の放棄があつた場合には、その放棄がなかつたものとした場合における相続人の数とする。)とする。

と規定されているため、配偶者が相続放棄をしても、その金額は減少しません。

相続放棄をしたら死亡保険金・死亡退職金は受け取れない?

死亡保険金・死亡退職金は、相続財産ではないため、相続放棄をしても受け取ることができます。

これらは、相続財産とみなされますので(「みなし相続財産」と言います)、相続税が課税されます。

想う相続税理士

相続放棄をしたら、相続財産が受け取れないんだから、相続税は絶対にかからない、という訳ではありません。

相続放棄をすると、相続により財産を取得することはできなくなりますが、遺贈により(遺言に従って)財産を取得することは可能です。

遺言により、相続人以外の方に財産を渡すことができることは、ご存知の方も多いかと思います。

想う相続税理士秘書

相続放棄により、相続人ではなくなっても、遺贈であれば、財産を受け取ることができます。

相続税法基本通達(一部抜粋)
3-3 相続を放棄した者の財産の取得
相続を放棄した者が法第3条第1項各号に掲げる財産を取得した場合においては、当該財産は遺贈により取得したものとみなされるのであるから留意する。

配偶者が相続放棄をして受け取った死亡保険金・死亡退職金は、遺贈により取得したみなし相続財産に該当します。

死亡保険金・死亡退職金の非課税枠は適用できない

「死亡保険金の非課税限度額」「死亡退職金の非課税限度額」が適用できるのは、相続人だけです。

相続税法(一部抜粋加工)
第12条 相続税の非課税財産
次に掲げる財産の価額は、相続税の課税価格に算入しない。
五 相続人の取得した第3条第1項第1号に掲げる保険金(前号に掲げるものを除く。以下この号において同じ。)
六 相続人の取得した第3条第1項第2号に掲げる給与(以下この号において「退職手当金等」という。)

配偶者が相続放棄をすると、配偶者が取得した死亡保険金・死亡退職金については、上記の非課税枠は適用できません。

配偶者の税額軽減は適用できる?

相続税には、「配偶者の税額軽減」という制度があり、配偶者が取得した正味財産については、「1億6,000万円」と「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか多い金額までは、相続税がかかりません。

配偶者が相続放棄をしたら、配偶者の税額軽減は適用できないのでしょうか?

相続税法基本通達(一部抜粋)
19の2-3 相続を放棄した配偶者に対する相続税額の軽減
配偶者に対する相続税額の軽減の規定は、配偶者が相続を放棄した場合であっても当該配偶者が遺贈により取得した財産があるときは、適用があるのであるから留意する。

配偶者の税額軽減は、遺贈により取得した財産に対しても適用することができます。

相続放棄により、相続人ではなくなったとしても、配偶者であることに変わりないため、配偶者の税額軽減は適用できます。

想う相続税理士

配偶者が相続放棄をした場合には、債務控除についても、ご注意を。

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
13-1 相続を放棄した者等の債務控除
相続を放棄した者及び相続権を失った者については、法第13条(債務控除)の規定の適用はないのであるが、その者が現実に被相続人の葬式費用を負担した場合においては、当該負担額は、その者の遺贈によって取得した財産の価額から債務控除しても差し支えないものとする。