【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続空き家の特例と取得費加算特例・居住用3,000万円控除・住宅ローン控除との関係

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続空き家の特例と他の特例等との「併用」の可否について、お話します。

想う相続税理士

「相続空き家の特例」については、こちらの記事(またはその他の記事)をご覧ください。
所得税の確定申告で相続空き家の特例を否認されると二重の損失になる理由

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取得費加算の特例とは併用不可

相続空き家の特例と取得費加算の特例は重複適用できる?

上記の記事でお話したとおり、相続空き家の特例と取得費加算の特例は併用できません。

ただし、相続空き家の特例を適用できない「離れ」「倉庫」等、または、「店舗併用住宅の旧店舗部分で居住用に該当しない部分(おおむね90%以上基準を満たさなかった場合)」に対応する部分については、取得費加算の特例を適用することができます。

マイホームを売ったときの特例とは併用可

一人暮らしだったAさんが亡くなり、長男BさんがそのAさんのご自宅を相続により取得しました。

その後、長男Bさんが亡くなったAさんのご自宅を売却することになったのですが、「相続空き家の特例」の要件を満たします。

また、これとは別に、長男Bさんが住んでいたC町のご自宅を同じ年に売却することになったのですが、こちらもまた、「マイホームを売った時の特例」「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」)の要件を満たします。

この場合、長男Bさんは、その年分の所得税の確定申告において、「相続空き家の特例」「マイホームを売った時の特例」のどちらも適用することができます。

長男Bさんが亡くなったAさんのご自宅を単独相続した場合には、特別控除の適用限度額は、両特例合わせて3,000万円となります(各特例毎に3,000万円ではありません)。

租税特別措置法関係通達(一部抜粋加工)
35-7 同一年中に自己の居住用財産と被相続人の居住用財産の譲渡があった場合の特別控除の適用
措置法第35条第3項に規定する相続人(以下35-23までにおいて「相続人」という。)が、同一年中に同条第2項各号に規定する譲渡及び同条第3項に規定する対象譲渡(以下35-25までにおいて「対象譲渡」という。)をし、そのいずれの譲渡についても同条第1項の規定の適用を受ける場合は36-1に定める順序により特別控除額の控除をすることとなるのであるが、これらの譲渡に係る分離短期譲渡所得又は分離長期譲渡所得の区分が同一であるときは、当該対象譲渡に対応する金額から先に特別控除額の控除をするものとする。ただし、納税者が同条第2項各号に規定する譲渡に対応する金額から先に特別控除額の控除をして申告したときは、これを認める。
なお、同条第1項の規定により、その年中にその該当することとなった全部の資産の譲渡に係る譲渡所得の金額から3,000万円(同条第4項の規定の適用がある場合には、次項に定める算式により計算した金額)を限度として控除することに留意する。

マイホームを売ったときの特例と住宅ローン控除は併用不可

長男Bさんが住んでいたC町のご自宅を売却し、同じ年にD町に新築・購入したご自宅がある場合、C町のご自宅の売却について「マイホームを売った時の特例」を適用し、かつ、D町に新築・購入したご自宅に係る住宅ローンについて「住宅ローン控除」を適用することはできません(併用不可)。

同じ年ではなくてもダメな場合があります。

想う相続税理士秘書

国税庁HP(一部抜粋加工)
重複適用できない譲渡所得の特例
(特定増改築等)住宅借入金等特別控除については、入居した年、その前年又は前々年に、「居住用財産の譲渡所得の課税の特例」などの特例(注)の適用を受けた場合には、その適用を受けることはできません。
また、入居した年の翌年から3年目までのいずれかの年中に、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の対象となる資産以外の資産を譲渡し、この特例を受ける場合も、(特定増改築等)住宅借入金等特別控除の適用を受けることはできません。
(注)「居住用財産の譲渡所得の課税の特例」などの特例とは、次のものをいいます。
・居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法31条の3)
・居住用財産の譲渡所得の特別控除(措法35条1項)
・特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36条の2)
・特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例(措法36条の5)
・既成市街地等内にある土地等の中高層耐火建築物等の建設のための買換え及び交換の場合の譲渡所得の課税の特例 (措法37の5)
(略語:措法=租税特別措置法)

相続空き家の特例と住宅ローン控除は併用可

長男Bさんは、亡くなったAさんのご自宅の売却について「相続空き家の特例」を適用し、D町に新築・購入したご自宅に係る住宅ローンについて、「住宅ローン控除」を適用することができます。

国税庁HP(一部抜粋加工)
相続した空き家を売却した場合の特例チェックシート(令和6年分用)
※2 所得税及び復興特別所得税の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除との併用が可能です。

想う相続税理士

「マイホームを売った時の特例」「相続空き家の特例」は、どちらも租税特別措置法第35条の規定なのですが、住宅ローン控除と併用できるかどうかに違いがありますので、ご注意を。