相続税専門税理士の富山です。
今回は、耐用年数を経過した財産の相続税評価について、お話します。
法定耐用年数を経過した自家用車の相続税評価
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
129 一般動産の評価
一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
自家用車(車両運搬具)は、一般動産に該当します。
そして、「実際に市場で売買されている金額」や「専門家に付けてもらった金額」等を参考にして評価する、ということになっています。
これらがまったく分からない場合には、減価償却のような方法で計算します。
ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。
この方法で計算する場合には、普通自動車の法定耐用年数は6年なので、製造から10年経過(法定耐用年数6年を完全に経過)しているときは、計算上1円(ほぼ0円)となります。
法定耐用年数を経過した建物の相続税評価
木造の住宅用の家屋(建物)の法定耐用年数は、22年です。
亡くなった方のご自宅が、建築から30年経過(法定耐用年数22年を完全に経過)している場合、1円(ほぼ0円)で計上してもいいのでしょうか?
財産評価基本通達(一部抜粋加工)
89 家屋の評価
家屋の価額は、その家屋の固定資産税評価額(地方税法第381条《固定資産課税台帳の登録事項》の規定により家屋課税台帳若しくは家屋補充課税台帳に登録された基準年度の価格又は比準価格をいう。以下この章において同じ。)に別表1に定める倍率を乗じて計算した金額によって評価する。
この「別表1に定める倍率」は1.0です。
つまり、相続税評価額は固定資産税評価額とイコールになります(貸家等の場合を除く)。
法定耐用年数を完全に経過しているからといって、1円(ほぼ0円)で評価することはできません。
国税不服審判所HP(一部抜粋加工)
裁決番号:平240006
裁決年月日:平241213
請求人は、贈与により取得した家屋(本件家屋)の価額は、本件家屋は減価償却資産の耐用年数等に関する省令(耐用年数省令)に規定する耐用年数を経過しているものであるから、同省令に規定する残存価額(取得価額に残存割合である100分の10を乗じて算定した価額)を基礎として評価すべきであり、財産評価基本通達89《家屋の評価》(本件通達)の定めにより固定資産評価額を基礎として算定した価額(本件評価額)は時価を上回るものである旨主張する。しかしながら、固定資産税における価格とは時価をいうから、家屋の固定資産評価額が合理的な評価方法により算定されていると認められる限り、これを家屋の客観的交換価値と認めるのが相当であるところ、本件家屋の固定資産税評価額は、固定資産評価基準に基づき、一般的な合理性を有するものと解されている評価方法(家屋の再建築費評点数を基礎としてこれに家屋の損耗の状態等による減点を行う評価方法)により適正に算定されていることから、客観的な交換価値を正確に反映したものと認められる。したがって、本件通達の定めにより当該固定資産税評価額を基に算定した本件評価額が時価を上回るとは認められない。また、耐用年数省令は減価償却費を計算するためのものであって、客観的交換価値を計算するためものではないから、請求人の主張する耐用年数省令が規定する残存価額は、本件家屋の客観的な交換価値を反映したものとは認められない。(平24.12.13 札裁(諸)平24-6)
想う相続税理士
各資産の種類ごとの評価方法をきちんと確認して、正しく評価しましょう。