相続税専門税理士の富山です。
今回は、貸宅地の評価について、お話します。
相続税申告における貸宅地の評価方法
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋加工)
No.4613 貸宅地の評価
対象税目
相続税、贈与税
概要
貸宅地とは、借地権など宅地の上に存する権利の目的となっている宅地をいいます。
計算方法・計算式
貸宅地の評価は、次の1から5までに掲げるその宅地の上に存する権利の区分に応じて行います。
1 借地権の目的となっている宅地
借地権とは、建物の所有を目的とする地上権または土地の賃借権をいいます(借地借家法第22条から第25条までに定める借地権を除きます。)。
借地権の目的となっている宅地の価額は、次の算式で求めた金額により評価します。
(算式)
自用地としての価額-自用地としての価額×借地権割合(注)
(注)「借地権割合」は、国税庁ホームページ「財産評価基準書 路線価図・評価倍率表」 で確認することができます。また、借地権の取引慣行がないと認められる地域にある貸宅地の価額を評価する場合には、借地権割合を20パーセントとして計算します。
貸宅地は、貸していない土地(自用地)よりも、安く評価します。
どれぐらい安く評価するかと言うと、借地権の金額だけ安く評価します。
計算上は、上記にあるとおり、「自用地×借地権割合」をマイナスします。
想う相続税理士
貸宅地はなぜ自用地よりも安く評価できる?
貸している土地、というのは、地代収入が発生しますから、自用地よりも高くなるような気がします。
しかし、貸宅地は、貸しているため、自由に使うことができません。
売りたいと思っても、すぐに売れません(借りている人をすぐに追い出す訳にはいきません)。
上記でお話した、借りている人の「借地権」が発生しているからです。
それでも、地代収入が発生するんだからいいじゃないか、と思われるかもしれませんが、その地代が安かったらどうでしょうか?
自由に使えない上に地代も安い、ということになります。
ひとえに貸宅地と言っても、その内容は様々です。
借地権価額控除方式で貸宅地を正しく評価できる?
相続税申告における財産評価においては、細かい話をすると、上記の「自用地×借地権割合をマイナス」するというような簡単な計算ではなく、「実際の地代」「通常の地代」「相当の地代」等を加味して計算します。
それでも、借地権割合を用いることに変わりはなく、その借地権割合は「エリアによって一律」で固定されています(路線価図・評価倍率表に記載されています)。
上記でお話したとおり、「ひとえに貸宅地と言っても、その内容は様々」であり、同じ貸宅地でも「自由に使えない上に地代も安い」ようなものもある中で、すべての貸宅地を財産評価に定める同じ算式で正しく評価できるのでしょうか?
借地権価額控除(「自用地×借地権割合をマイナス」)方式では正しい評価はできない、として、鑑定評価で申告し、争った事案があります。
出典:TAINS(F0-3-628)(一部抜粋加工)
平22-03-18裁決
借地権割合は正しく算定されている?
納税者側は、「借地権割合」なんて(ちゃんと)算定できない(できるはずがない)、と主張しました。
請求人は、本件各土地の所在する地域においては、借地権及び底地の取引事例が把握できないことから、適正な借地権割合を算定できず、したがって、本件各土地を借地権価額控除方式により評価することは妥当ではない旨主張する。
しかし、借地権割合は「プロ(不動産鑑定士)の意見も聞きながら正当な手続きで算定されている」とされました。
借地権価額控除方式を適用する場合における借地権割合の評定は、借地権又は底地の売買実例価額のみに基づいて行われるのではなく、評価通達27の定めに従って、借地権の売買実例価額、精通者意見価格、地代の額等を基として行うこととされているところ、当審判所の調査によれば、〇〇国税局長は、土地取引の精通者としての不動産鑑定士の意見等を勘案して本件各土地の所在する地域の借地権割合を40%と評定しており、これは、評価通達27の定めに従った適切な手続に基づいて行われたものであることから、当該借地権割合は、本件各土地の所在する地域における借地権割合として正当に評定されていると認められる。
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