相続税専門税理士の富山です。
今回は、みなし相続財産である「生命保険契約に関する権利」について、お話します。
相続税の課税対象になる財産とは?
国税庁HP・タックスアンサー(一部抜粋)
No.4105 相続税がかかる財産
相続や遺贈によって取得した財産(本来の相続財産)
相続税は、原則として、死亡した人の財産を相続や遺贈(死因贈与を含みます。)によって取得した場合に、その取得した財産にかかります。
この場合の財産とは、現金、預貯金、有価証券、宝石、土地、家屋などのほか貸付金、特許権、著作権など金銭に見積もることができる経済的価値のあるすべてのものをいいます。
上記にあるとおり、現預金や株式、不動産等は相続税の課税対象となり、「本来の相続財産」と言います。
相続税の課税対象になるのは、この「本来の相続財産」だけではありません。
そのほか相続税がかかる財産(みなし相続財産ほか)
次に掲げる財産も相続税法の規定などにより相続税の対象となります。
(1) 死亡退職金、被相続人が保険料を負担していた生命保険契約の死亡保険金など
上記にあるとおり、死亡退職金や死亡保険金等も「みなし相続財産」として、相続税の課税対象になります。
これらは亡くなった方の財産(亡くなった方が所有していた財産)ではありません。
しかし、「相続の発生によりお金を受け取る」という経済的実態に着目し、相続財産とみなして、相続税を課税することになっているのです。
みなし相続財産は原則として遺産分割の対象外
上記の本来の相続財産は、遺言が無ければ、相続人間の遺産分割協議により取得者を決定します。
それに対して、みなし相続財産は、原則として取得者が決まっています。
死亡保険金であれば、保険金受取人が決まっていて、その受取人の方が取得します。
生命保険契約に関する権利に注意
お話その1
父Aさんが亡くなりました。
父Aさんは、長男Bさんを被保険者とするC生命保険契約に加入していました。
保険契約者=保険料負担者=父Aさんです。
被保険者である長男Bさんが死亡していないため、死亡保険金は支払われません。
しかし、生命保険契約は、解約すると解約返戻金を受け取ることができるため、財産的な価値があります。
その権利を「生命保険契約に関する権利」と言い、こちらも「みなし相続財産」に該当します。
このC生命保険契約に係る生命保険契約に関する権利もみなし相続財産なのですが、遺産分割協議の対象となります。
胃酸分割協議により長男Bさんが相続することになったら、保険契約者を父Aさんから長男Bさんに変更します。
お話その2
父Aさんが亡くなりました。
父Aさんが、長男Bさんを被保険者とするD生命保険契約に加入していました。
保険料負担者=父Aさん・保険契約者=長男Bさんです。
このD生命保険契約は、遺産分割協議の対象外です。
なぜなら、D生命保険契約の保険契約者は既に長男Bさんになっているからです。
遺産分割協議を経ることなく、保険契約者である長男Bさんが相続により取得したものとみなされます。
お話その3
父Aさんが亡くなりました。
父Aさんが、孫Eさんを被保険者とするF生命保険契約に加入していました。
保険料負担者=父Aさん・保険契約者=孫Fさんです。
このF生命保険契約は、遺産分割協議の対象外です。
なぜなら、F生命保険契約の保険契約者は既に孫Fさんになっているからです。
孫Fさんは相続人ではないため、遺産分割協議に参加することはできないのですが、保険契約者である孫Fさんが「遺贈」により取得したものとみなされます。
想う相続税理士