【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続が発生した後に金融機関の口座からお金を引き出したらどうなる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続の発生に伴い金融機関の口座からお金を引き出す場合の注意点について、お話します。


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残高証明書の残高をそのまま申告するだけでは失敗する

相続税の申告のご依頼を受ける場合、亡くなった方の預貯金の通帳を拝見します。

必ず確認しなければならないのは、亡くなる直前のお金の引き出しです。

多くの場合、亡くなる直前にお金の引き出しがあるのですが、皆さんがなぜお金を引き出すかというと、相続の発生により口座からお金を引き出すことができなくなってしまう(口座が凍結されてしまう)ことを恐れるからです。

それはほとんどの場合、葬式費用など、相続発生後にかかるお金に充てるための資金として手元に置いておきたいからです。

相続税の申告は、亡くなった方の亡くなった日時点における財産を元に計算するのですが、例えば、亡くなった日時点の口座残高が300万円だったとしても、ご病状などにより、その亡くなることを予期し、葬式費用の足しにしようと、その前日に50万円を口座から引き出していた場合、その引き出した50万円は、亡くなった時点において現金として存在していたワケですから、その50万円も「現金」として相続財産に計上する必要があります。

相続が発生すると金融機関の預貯金は引き出せなくなる?

相続の発生と同時に預貯金口座が自動的に凍結されるワケではありません。

金融機関による相続発生の確認に時間がかかれば、(相続が発生する前は、時間的・精神的な余裕がなく引き出せなかったという方でも)一定期間内であれば、相続発生後でも、お金を引き出すことができます。

亡くなった時点の口座残高が300万円で、亡くなった日の次の日に30万円を引き出した、という場合、その30万円は上記の50万円のように、相続財産=現金として申告する必要はありません。

亡くなった日時点の残高証明書を取得すれば、その口座の残高については300万円と記載され、その300万円を相続財産=預貯金として申告することになりますが、次の日に引き出した30万円は、その300万円の中に含まれているからです(亡くなった時点では現金として存在していない)。

亡くなった方の財務状態を把握せずに引き出すのは危険

つまり、亡くなった後に引き出したお金を相続財産=現金として申告しなくても、税務署は文句を言いません。

しかし、注意すべき点があります。

それは、相続放棄ができなくなってしまう可能性がある、ということです。

財産を相続することを承認した、とみなされるリスクがあります。

「口座凍結後」かつ「遺産分け前」でも引き出せる方法がある

時間と手間はかかりますが、相続法の改正により、遺産分けの話し合いがまとまる前でも、一定の金額まで、堂々と預貯金の払い戻しを受けることができるようになりました。

少額なら家庭裁判所の判断を経なくてもOK

民法(一部抜粋)
(遺産の分割前における預貯金債権の行使)
第九百九条の二 各共同相続人は、遺産に属する預貯金債権のうち相続開始の時の債権額の三分の一に第九百条及び第九百一条の規定により算定した当該共同相続人の相続分を乗じた額(標準的な当面の必要生計費、平均的な葬式の費用の額その他の事情を勘案して預貯金債権の債務者ごとに法務省令で定める額を限度とする。)については、単独でその権利を行使することができる。この場合において、当該権利の行使をした預貯金債権については、当該共同相続人が遺産の一部の分割によりこれを取得したものとみなす。

大きな金額が必要なら家庭裁判所の仮分割の仮処分で

家事事件手続法(一部抜粋)
(遺産の分割の審判事件を本案とする保全処分)
第二百条
3 前項に規定するもののほか、家庭裁判所は、遺産の分割の審判又は調停の申立てがあった場合において、相続財産に属する債務の弁済、相続人の生活費の支弁その他の事情により遺産に属する預貯金債権(民法第四百六十六条の五第一項に規定する預貯金債権をいう。以下この項において同じ。)を当該申立てをした者又は相手方が行使する必要があると認めるときは、その申立てにより、遺産に属する特定の預貯金債権の全部又は一部をその者に仮に取得させることができる。ただし、他の共同相続人の利益を害するときは、この限りでない。

想う相続税理士

トラブルにならないよう、お金を引き出した場合には、他の相続人にもそのことをきちんと伝えましょう。