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相続税を安くするために絶対に押さえるべき「贈与」というものの「形態」と「時点」

これも「贈与」


CAUTION
タダであげるのだけが贈与ではない!

預金や土地などを、タダで渡すことだけを贈与と考えると失敗します。

財産がタダで移転し、「あげますよ」「もらいますよ」という意思表示が明確な場合には、その財産が贈与されたということになりますが、それ以外にも、実態として、「贈与があったとみなされるもの」があり、これらについては、タダで移転した財産と同様に贈与税が課税されます。

ケースとしては次のようなものがあります。

生命保険金

被保険者が死亡したことにより、生命保険金を取得した場合において、その保険料を被保険者(お亡くなりになった方)や保険金受取人以外の方が負担している場合には、その保険金受取人が、その保険料を負担している方から、その生命保険金を、贈与により取得したものとみなされることになります。

ちなみに、その保険料をその被保険者が負担していた場合には相続税が課税され、その保険金受取人が負担していた場合には一時所得として所得税が課税されます。

定期金

上記の生命保険金と似ていますが、定期金給付契約についても、その定期金の給付事由が発生した場合に、その定期金の受取人以外の方が、その契約の掛金や保険料を負担している場合には、その定期金給付契約に関する権利についても、贈与があったものとみなされます。

低額譲渡

メチャクチャ安い金額でモノを買った場合、そのモノを買うのに(本当は)実際に必要な金額と、自分が実際に払った金額との差額というのは、相手にマケてもらった金額ということになりますが、その差額の部分については、「贈与されたのと同じでしょ、タダでもらったということだよね」ということで、売った人から贈与により取得したものとみなされるということになります。

とはいえ、その財産に最初から値札が付いていない場合もあります。

その場合には原則として、その財産が、土地や借地権、家屋や構築物などである場合には、そのモノの「時価」との差額を贈与とみなします。

それ以外の財産については、「相続税評価額」との差額を贈与とみなします。

ただし、そのメチャクチャ安い金額で売ってくれた人が、買った人の「扶養義務者」であり、買った人が「資力を喪失して債務を弁済することが困難である」場合には、その贈与部分について課税するのはカワイソウ(支え合う関係にある人が援助しただけ)という考えから、贈与により取得したものとはみなされないこととなります。

土地の時価

土地については、実際の時価というものを把握するのが難しい場合があります。

商業地で区画が綺麗な地域であれば、売買の取引事例も多く、相場としての「時価」の把握は、比較的可能かもしれません。

しかし、そうでない一般の土地は、形も場所も千差万別です。

第三者間の売買であれば、どちらか一方の力が強いなどという特別な事情がない限り、売買金額は、理論上、高く売りたい人と安く買いたい人の話し合いによってちょうどいい値段で決まった金額、ということになるので、あまり問題視されることはありません。

これが親族間の売買だと、親族はその一家で一体ですから、「親族に都合のいいような値段をグルになってつけているのではないか」と税務署に見られる傾向があります。

では、実際にどのような金額をもって時価と考えればいいのかというと、時価=「通常の取引価格」です。

しかし、そのような「参照可能な実際の売買があった際の実例価格」は、たまたま周辺で同じような似ている土地の売買が最近あった場合でしか分かりません。

そのような実例がない場合には、「相続税評価額」「公示価格」「基準地標準価格」などをベースに計算することになります。

公示価格や基準地標準価格は、それぞれ特定の1ヶ所の土地の価格であり、時価を知りたい土地は、その土地と全く同じ土地ではありません。

そこで、路線価による比準調整をしたりして、その公示価格等を使用します。

ただし、この相続税評価額や、公示価格、基準地標準価格というものは、実勢価格に比べてかなり割高になっていることが多いのです。

従ってそれを採用してしまうと、実態以上に贈与とみなされる金額が大きく計算されてしまう可能性があります。

そこで、実務上でもよく採用されるのが、「不動産鑑定士による鑑定評価額」です。

最後はこれしかありません。

債務免除

ただで物をもらうことが贈与になるように、借金があるのにその借金を「返さなくていいよ」と言われる、つまり借金を棒引きにしてもらうということ、債務を免除してもらうということ、これもその免除してもらったことによって、経済的に得をしている訳ですから、その債務免除をしてもらった金額について、その債務免除をしてくれた方から、贈与を受けたものとみなされます。

これについても、低額譲渡と同じように、その債務者が「資力を喪失して債務を弁済することが困難である」という場合には、債務の免除を受けた場合や、扶養義務者に債務の引き受けをしてもらったり、代わりに債務の弁済をしてもらった場合については、その債務の弁済をすることが困難である部分の金額について、は贈与より取得したものとはみなされません。

会社の
株式の
価値の増加

非上場会社の株式の評価額が上昇する場合があります。

その非上場会社の株主に、AさんとBさんがいたとします。

その株主Aさんがその非上場会社に貸している貸付金を放棄(債権放棄)した場合、その会社の貸借対照表を想像してみると、会社としては、株主Aさんに借金を棒引きしてもらったことにより、借金が減るということですから、その分、会社の財務体質が良くなり、会社の株の評価が上がる可能性があります。

その場合、当然債権放棄をした株主Aさんの持っているその非上場会社の株式の評価額も上がりますが、同様に、もう一人の株主Bさんの持っている株式の評価額も上がります。

この場合、株主Aさんの債権放棄により、株主Bさんの株の価値が上がったということになり、その価値増加分は、株主Aさんのおかげで株主Bさんがタダでゲットしている(得している)訳ですから、株主Aさんから株主Bさんに対する贈与があったものとして、これも贈与税の課税対象となります。

その贈与は「いつ」の贈与?

贈与税の
申告の
タイミング

贈与税は、1月1日から12月31日までの間にもらった財産の評価額の合計額に対して計算し、税務署に申告することになります。

ですから年末ギリギリに行われた贈与については、それがいつの贈与なのか、ということについてきちんと検討する必要があります

そもそも
「贈与」
って
どういう
こと?

「贈与」というのは、自分の財産をタダで相手方に渡すことですが、ただ渡すだけではなくて、まず、あげる方が「あげますよ」という意思表示をして、もらう方が「分かりました」とそれを受託することによって、その贈与が成立します。

この「あげますよ」という意思表示には2つの方法があります。

それは、「書面による贈与」「口頭による贈与」です。

相続対策としての生前贈与についてのインターネットの記事を見ていると、「贈与契約書」という言葉がよく出てきますが、必ずしも贈与というのは書面によらなければならないということにはなっていません。

また、「書面による贈与」は取消しができませんが、「口頭による贈与」は取消しが可能という違いがあります。

書面によらない贈与(「口頭による贈与」)は、実際に贈与するまでの間はいつでもその契約を取り消すことができる、ということになっているのです。

税務上の
贈与の
「時期」

では、贈与税はいつの課税になる(いつの贈与になる)のでしょうか?

書面による贈与

贈与がいつあったのかということについては、書面による贈与については、その書面により「その契約の効力が発生した時」ということになります。

ただし、この書面があれば、それが「贈与が成立した証拠」になるかというと、必ずしもそうではありません。

その内容や状況等により、実際の真実とは異なる状況を仮装している書面だ、と認められる場合には、その効力は認められないものとなります。

また、公正証書によって贈与契約書が作成されている場合、その公正証書によって作成されていれば、それをもって、その作成時に贈与があったと考えてよいかというと、必ずしもそうではありません。

やはり実態で判断する必要があります。

公正証書による贈与があったとしても、その公正証書作成日において贈与があったと考えるのか、それとも例えば土地であれば、登記をした時に贈与があったと考えるのかは、実際にその財産をもらった方が、その財産をいつ支配できるようになったか等を検討する必要があります。

単純に、「公正証書による贈与契約書があれば、それによって贈与の証明は確実、税務調査があったとしてもそれは認められる」と考えるのは危険です。

あくまでも実態を兼ね備えておく必要があります。

書面による贈与の時期を判断する際、次のような点を検討すべきです。

(1)その書面に記載されている「贈与の時期」の選定の根拠
(2)書面の記載内容と、財産をあげる方及びもらう方の状況や言動に不一致がないか
(3)その贈与の必要性の有無
(4)例えば、公正証書により贈与契約書を作っているにもかかわらず、所有権移転登記が行われていないとすれば、その行われていないことに何か合理的な理由があるのか
(5)その贈与された財産の現実の支配者、管理者(要は実際の所有者)は誰なのか

口答による贈与

書面によらない贈与の場合には、その贈与を「実際にした時」ということになっています。

この「実際にした時」とはどういうことかというと、もらった方がそのもらった財産を実際に管理し、自分のものとして使える状態になった時、ということになります。

通常は、その財産の引渡しを受けた日ですね。

今までの観点で検討しても、贈与がいつあったのかということがなかなか特定できない場合には、土地などのように所有権の登記等が必要なものについては、その登記や登録があった時が贈与があった時として取り扱われます。

農地の贈与

農地については若干取り扱いが特別になっています。

先ほど言ったように、財産の贈与というのは、「あげるよ」という意思と、「もらうよ」という意思が揃って、初めて成立するのですが、農地の場合には、農業委員会や都道府県知事の許可が必要になってきます。

2人がOKと言ったとしても、それだけでは実際に農地の所有権は移転できないのです。

したがって、最終的に農地法の許可又は届出の効力が生じた時に。贈与があったものとする考え方が原則となっています。

ただし特例があります。

例えばX年に、農地の所有権の移転について、その許可又は届出に関する申請書等を農業委員会に提出し、翌年X+1年の1月1日から3月15日までの間に、その許可又は届出の効力が生じた場合、そのX+1年の3月15日までに、X年分の贈与として取扱った贈与税の申告書を提出していれば、X年に贈与があったものとして認められることになっています。

X年においてはまだ贈与の許可が下りていなくてもです。

年末ギリギリにいろいろやらない!

このように、贈与については「贈与の時期」というものの判断が難しい場合があります。

後々困らないように、同一年に契約書作成、及び所有権移転(支配権移転)が完了するようにしましょう。

親族間の
贈与に
ついて

親族間の現金や不動産の贈与については、「当事者間でどうにでもなる話だよね」というように税務署に見られています。

そういう側面があるため、単純に、形式上の要件を備えていれば贈与が成立する、と考えず、それをきちんと証明できるように準備しておきましょう。

実際の現金の動きが明らかになるようにしたり、「もらった」ということを、もらった方がきちんと認識できていた、そして、もらった財産の管理をきちんとしている、ということを証明できるような資料作りが必要です。

書面がなくても贈与は成立しますが、親族間の贈与については、その実態性が疑われやすいので、贈与契約書などの書面を作る、という努力はいいと思います。

しかし、書面があれば贈与が証明できるかというと、そうではありません。

その贈与があったという実態をきちんと証明、説明できるように書類などを準備しておくことが、贈与契約書を作成するよりももっと重要です。

例えば、

書面により贈与契約書を作成したにもかかわらず、その後、すぐに登記や登録を行わない。

行うことについて何の問題もないのに。

その登記や登録が放置されている。

このような場合、実際にその贈与契約書の作成日に贈与があったとみなすことができると思いますか?

実際に登記や登録がされていないということであれば、もらった方はその財産を売ることもできないですよね。

その状態で、その財産を管理しているといえるのでしょうか?

疑問が生じますよね。

なんで名義を移転しないのに契約書を作成したんだろう?

租税回避目的なのでは?という見方をされる危険性もあります。

想う相続税理士

形式に囚われないようにご注意を!