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安易に限定承認をすると所得税に苦しめられますよ!

この記事の結論
限定承認をすると、(その時点では)所得税の分だけ損をすることがありますので、注意が必要です。また、限定承認により所得税の分だけ損することにより、その後の相続財産の売却時には、(相続財産を時価で取得したことになるため)得をする(譲渡所得が発生しにくい)ようになっています。

相続の際、亡くなった方の借金などの債務が多い場合や、多そうな場合、相続放棄をして、債務の負担を逃れることを検討する

この相続放棄と似ているもので、「限定承認」というものがある

「限定承認」とは、プラスの相続財産の金額を限度として、債務を負担する方法

「限定承認」は、次のようなケースで検討される

プラスの相続財産の金額と債務の金額のどちらが大きいか不明(もしかしたら債務の方が大きいかもしれない)
何としても取得したいプラスの相続財産がある(相続放棄するワケにはいかない財産がある)→自宅・先取特権・生命保険金の活用
限定承認をすると、亡くなった方が相続人に時価で財産を売却したものとみなされる(「みなし譲渡」と言います)

所得税法(一部省略)
第59条  贈与等の場合の譲渡所得等の特例
次に掲げる事由により居住者の有する山林(事業所得の基因となるものを除く。)又は譲渡所得の基因となる資産の移転があつた場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があつたものとみなす
一 贈与(法人に対するものに限る。)又は相続(限定承認に係るものに限る。)若しくは遺贈(法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。)

亡くなった方の最後の年の確定申告において、譲渡所得が発生する

亡くなった方は確定申告できないので、相続人が代わりに確定申告しなければならない(「準確定申告」といいます)

この準確定申告により納付することとなる所得税も、相続人が負担しなければならない亡くなった方の債務

プラスの相続財産(例えば5,000万円=相続税評価額=時価)よりも元々の債務(例えば6,000万円)の方が多ければ、この準確定申告による所得税(例えば750万円)が債務に加算されたところで、債務については5,000万円までしか負担しなくていいので、負担は増えない

しかし、プラスの相続財産(例えば5,000万円)・債務(例えば4,000万円)だった場合、所得税(例えば750万円)が債務に加算されると、その所得税も負担しなければならない

単純承認(相続放棄や限定承認をしなかった場合)なら、5,000万円のプラスの相続財産と3,000万円の債務で済んだのに、限定承認をすることによって、債務が増加してしまう

ここがポイント(所得税の分だけ損をする=所得税相当額の債務を追加負担しなければならない)

実は、5,000万円で相続人に譲渡があったものとみなされることには理由がある

相続人は、5,000万円(時価)でその資産を亡くなった方から買ったということになるので、その資産を5,000万円(時価)で売っても、相続人には税金がかからない

5,000万円が丸々手元に残るので、同額の債務を負担することになっても、丸々債務の返済に充てることができる(相続人が債務を返済しやすくなる)

想う相続税理士

限定承認をするのは、債務の金額が大きい場合なので、相続税が出ることはあまり考えられませんが、生命保険金があったりすると、相続税が出ることも考えられますので、ご注意を。