【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

税務ハンドブックの相続税額の早見表が変更されて分かりやすくなっている!

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税額の早見表について、お話します。


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相続税額の早見表とは?

お客様のところに初めてお伺いし、亡くなった方の財産の大体の総額をお教えいただき、「うちの相続税はいくらぐらいになるんだい?」と質問された際、便利なのが(便利と思われるのが)相続税額の早見表です。

例えば、財産が1億円で、相続人が配偶者+子供3人の場合、相続税額の早見表の「相続人が4人の場合」のさらに「配偶者と子3人」のところを見れば、

課税価格 配偶者と子3人
5,000万円 0万円
6,000万円 30万円
8,000万円 138万円
1億円 263万円
1億5,000万円 665万円

となっているため、相続税は「263万円ぐらいです」とすぐにお答えすることができますし、財産が9,000万円だったら、「138万円と263万円の間なので、200万円ぐらいですかね」とすぐにお答えすることができます。

相続税額の早見表は配偶者の税額軽減後のものが多い

実は、上記の「263万円(ぐらい)」「200万円(ぐらい)」というのは、正しいようで、正しくない場合があります。

そこが相続税額の早見表の「使い勝手の悪いところ」なのです。

実際に、財産が1億円の場合の相続税額を計算してみましょう。

  1億円から遺産に係る基礎控除額(3,000万円+600万円×法定相続人の数4人=5,400万円)を控除する→1億円△5,400万円=4,600万円

上記の金額を法定相続人の法定相続分に従って配分する
配偶者:4,600万円×1/2=2,300万円
子3人:各4,600万円×1/6=7,666,000円

上記の金額に下記の税率表を適用する

法定相続分に応ずる取得金額 税率 控除額
1,000万円以下 10%
1,000万円超から3,000万円以下 15% 50万円
3,000万円超から5,000万円以下 20% 200万円
5,000万円超から1億円以下 30% 700万円
1億円超から2億円以下 40% 1,700万円
2億円超から3億円以下 45% 2,700万円
3億円超から6億円以下 50% 4,200万円
6億円超 55% 7,200万円

配偶者:2,300万円×15%△50万円=295万円
子3人:各7,666,000円×10%=766,600円

計算された税額を合計する
295万円+766,600円+766,600円+766,600円=5,249,800円

あれっ?263万円とは全然違う金額です。

実は、上記の相続税額の早見表には、「(法定相続分通りに財産を取得した場合の税額軽減後の相続税額)」という言葉が付記されているのです。

全体の相続税額(「相続税の総額」と言います)を計算したら、後はこれを実際の財産の取得割合に応じて各相続人等に配分します。

配偶者が「法定相続分通りに財産を取得」、つまり、財産を1/2相続したら、相続税も(「実際の財産の取得割合に応じて」)配分される、つまり1/2が配分されますから、5,249,800円×1/2=2,624,900円が配偶者の分の相続税ということになります。

この金額が「配偶者の税額軽減」によりゼロになりますから、残りが実際に納付することになる、つまり
【相続税の総額】5,249,800円△【配偶者の税額軽減額】2,624,900円=【実際納付額】2,624,900円
ということになります(厳密には、この後に税額控除等の計算をします)。

つまり、263万円ぐらい、ということです。

「結局、相続税額の早見表は合っているんでしょ?別に使い勝手は悪くないんじゃないの?」とお思いになるかもしれませんが、「法定相続分通りに財産を取得した場合」という前提が厄介なのです。

昔と比べ、今のお客様は、ネットで情報を集めてからご相談に来られます。

その時点で、「一次相続で配偶者が財産を取得すると、その分、二次相続の相続税が高くなる」ということをご存知なのです。

ですから、配偶者が法定相続分通りに財産を1/2取得する、ということをあまり考えていらっしゃいません。

(特に配偶者の方が既に財産をお持ちの場合には)配偶者の相続分を1/2より少なくすることが多いです。

では、そういう場合には、どのようにして相続税額の早見表を活用すればいいのでしょうか?

「(法定相続分通りに財産を取得した場合の税額軽減後の相続税額)」ということは、相続人が「配偶者と子」の場合には、その相続税を2倍にすれば、相続税の総額になる、ということです(配偶者の税額軽減で1/2になっているんですからね)。

後でお話するのですが、これも財産の金額が大きくなってくると、実はそうではなくなります(2倍しちゃダメな場合があります)。

また、「配偶者と子」以外のパターンの場合には、「2倍」ではありません。

想う相続税理士秘書

例えば、263万円と計算されたら、2倍して
526万円(=263万円×2)
となり、(二次相続も考慮して)配偶者が30%しか財産を相続しないとすれば、
526万円△526万円×30%=3,682,000円
というように、実際に納付する相続税を試算することになります。

いちいち2倍にするのは面倒くさい!

上記のとおり、法定相続分とは異なる遺産分けを検討されているお客様の相続税の概算を計算する場合には、基本的には早見表の数字を一度2倍にする必要があります。

面倒くさいですよね。

さらに、相続人のパターンが、上記のような配偶者がいるパターンではなく、子のみの場合、配偶者の税額軽減は当然使えませんから、相続税額の早見表の金額そのものが、基本的には実際に納付する相続税になります。

これを間違って2倍したら、相続税の試算もメチャクチャになってしまいます。

令和7年度版税務ハンドブックはさらに3パターンに分かれていた!

お客様のところにお伺いする時に持参するバッグに「税務ハンドブック」を入れているのですが、上記の令和7年度版を見てみたら、相続税額の早見表が進化していました。

例えば、財産が1億円で、相続人が配偶者+子供3人の場合であれば、

配偶者が全て相続した場合 配偶者 0円
配偶者が1/2を相続した場合 配偶者 0円
子の合計 262万円
子が全て相続した場合 子の合計 525万円

のようになっているんです(ブログのレイアウトの関係上、ちょっと向きを変えてあります)。

「子が全て相続した場合」のところが、配偶者の税額軽減を適用していない税額ですので、これが「相続税の総額」であり、例えば、財産を10%相続した子の相続税は、この数字に10%を掛ければすぐに計算できます。

「『配偶者が全て相続した場合』は、配偶者の税額軽減で相続税が0円になるんだから、無くてもいいんじゃない?」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、配偶者の税額軽減にも適用限度があるため、財産が多くなってくると、配偶者でも相続税が発生する(配偶者の相続税が0円じゃない場合がある)のです。

想う相続税理士

以前のもの(令和6年度版)を使っていた時には、間違ってお客様にお伝えしないよう、大判のポストイットに
「1億円 配+子3人 4,600万円→2,300万円・7,666,600円 295万円+766,600円×3=5,249,800円 →1/2:2,624,900円(263万円)」
とメモして貼り付けていました。

表の数字が「配偶者の税額軽減『後』なのか『前』なのか」を瞬時に認識できるようにするためです。

令和7年度版は、このポストイットが必要なくなり、大変便利になりました。