相続税専門税理士の富山です。
今回は、相続税の申告における小規模宅地等の特例の「家なき子特例」の要件について、お話します。
相続税の申告における小規模宅地等の特例とは?
相続税の計算においては、一定の居住用または事業用の宅地等について、その評価額を80%または50%減額して申告することができる「小規模宅地等の特例」という制度があり、大きくは「(1)特定事業用宅地等」「(2)特定同族会社事業用宅地等」「(3)特定居住用宅地等」「(4)貸付事業用宅地等」の4つの適用パターンがあります。
親族の方の生活基盤となり得る居住用または事業用の宅地等の評価額が高い場合、それらに対してダイレクトに相続税が課税されることで、相続税が払えず、そこから立ち退かなければならなくなる、つまり生活基盤を失うことになったり、失わないにしても、その評価額が高いことで相続税も高くなり、その納税資金に充てるために生活資金が失われる、ということがないように、一定の要件を満たしたときは、それらの評価額を減額して相続税を計算することができるようになっています。
家なき子特例の相続開始前3年以内の居住家屋所有者要件
上記の「(3)特定居住用宅地等」の適用パターンの1つとして(特定居住用宅地等の中にもさらにいくつかパターンがあります)、「家なき子特例」と呼ばれるものがあります。
家なき子特例とは、ザックリ言うと、亡くなった方が住んでいた自宅の宅地等を、マイホームがない親族が相続で取得した場合に、最大330㎡まで8割引きで評価できる、というものです。
実際には、もうちょっと細かい要件があり、
- 亡くなった方に配偶者がいない・法定相続人である同居親族もいない
- 取得する方は、その相続開始前3年以内に、「A:自分」「B:自分の配偶者」「C:自分の3親等内の親族」「D:上記ABCと特別の関係がある法人」が所有する国内にある家屋に居住したことがない
- 取得する方は、相続開始時に住んでいる家屋を過去に所有したことがない
上記②にあるとおり、家なき子特例には、相続開始前3年以内に住んでいた家屋の「所有者」の要件があります。
所有者と相続開始時に離婚していた場合にはどうなる?
Aさんが亡くなり、相続人はBさん1人です。
Bさんは、社会人になって10年以上、会社の寮に住んでいましたが、Aさんが亡くなる2年前にCさんと結婚し、Cさんが所有する家屋に住み始めました。
その1年後、BさんはCさんと離婚し、アパートで独り暮らしをしていたところ、Aさんが亡くなりました。
この場合、Bさんは「相続開始前3年以内」に「自分の配偶者」が所有する家屋に住んでいたので、家なき子特例は適用できないのでしょうか?
租税特別措置法関係通達(一部抜粋)
69の4-22 「当該親族の配偶者」等の意義
措置法第69条の4第3項第2号ロ(1)に規定する「当該親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人」とは、相続の開始の直前において同号に規定する親族の配偶者、当該親族の三親等内の親族又は当該親族と特別の関係がある法人である者をいうものとする。
Cさんは、相続開始直前におけるBさんの配偶者ではありませんので、上記②の要件を満たすことになります。
想う相続税理士