【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

生命保険金は本当に受取人のモノ?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続の発生により、生命保険金が支払われた場合、それは誰のモノか?ということについて、お話します。


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生命保険金の受取人って誰のこと?

生命保険金に特有の性質をちゃんと理解して納得の申告を!

上記の記事でもお話したように、生命保険金は、受取人のモノです。

では、「受取人」とは誰のことでしょうか?

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
3-11 「保険金受取人」の意義
法第3条第1項第1号に規定する「保険金受取人」とは、その保険契約に係る保険約款等の規定に基づいて保険事故の発生により保険金を受け取る権利を有する者(以下3-12において「保険契約上の保険金受取人」という。)をいうものとする。

受取人とは、保険契約において、保険金受取人となっている方です。

受取人以外の方が受け取ることもある!

社会人になってすぐ、生命保険に加入した、その時は保険金の受取人を親御さんにした、その後、結婚してお子さんも生まれたが、その受取人を配偶者やお子さんにしなかった、相続が発生した、親御さんは保険金の受取りを辞退し、配偶者の方が保険金を受け取った
というような場合、残された遺族の生活保障、という生命保険の機能を鑑みれば、配偶者やお子さんが受け取るべきと考えられますし、実際に結婚などを機に配偶者やお子さんに受取人を変更することがほとんどでしょう。

そこで、やむを得ない事情があったりして、保険契約において受取人となっている方以外の方が実際に保険金を受け取ったことについて相当の理由があると認められる場合には、その実際の受取人を「保険金受取人」とすることになっています。

相続税法基本通達(一部抜粋加工)
3-12 保険金受取人の実質判定
保険契約上の保険金受取人以外の者が現実に保険金を取得している場合において、保険金受取人の変更の手続がなされていなかったことにつきやむを得ない事情があると認められる場合など、現実に保険金を取得した者がその保険金を取得することについて相当な理由があると認められるときは、3-11にかかわらず、その者を法第3条第1項第1号に規定する保険金受取人とするものとする。

受取人が「相続人」となっていたら?

受取人が「相続人」となっていたら、相続人全員が受取人となるのですが、例えば、相続人が配偶者A・長男B・二男Cの場合、配偶者A1/2・長男B1/4・二男C1/4と「法定相続分」で分配して受け取ることになります。

出典:TAINS(Z999-5304)
最高裁判所第二小法廷平成3年(オ)第1993号保険金請求事件(破棄差戻し)
平成6年7月18日判決(一部抜粋加工)
保険契約者が死亡保険金の受取人を被保険者の「相続人」と指定した場合に、数人の相続人がいるときは、特段の事情のない限り、民法427条にいう「別段ノ意思表示」である相続分の割合によって権利を有するという指定があったものと解すべきであるから、各保険金受取人の有する権利の割合は、相続分の割合になるものというべきである。

民法(一部抜粋)
(分割債権及び分割債務)
第四百二十七条 数人の債権者又は債務者がある場合において、別段の意思表示がないときは、各債権者又は各債務者は、それぞれ等しい割合で権利を有し、又は義務を負う。

受取人が死亡していたらどうなる?

受取人として指定されていた方が、その被保険者の死亡より前に既に死亡していた場合には、その受取人の相続人全員が受取人となるのですが、例えば、相続人が配偶者A・長男B・二男Cの場合、配偶者A1/3・長男B1/3・二男C1/3と「均等」に分配して受け取ることになります。

出典:TAINS(Z999-5303)
最高裁判所第三小法廷平成2年(オ)第1100号保険金請求事件(棄却)(確定)
平成5年9月7日判決(一部抜粋加工)

商法676条2項の規定の適用の結果、指定受取人の法定相続人とその順次の法定相続人とが保険金受取人として確定した場合には、各保険金受取人の権利の割合は、民法427条の規定の適用により、平等の割合になるものと解すべきである。

けだし、商法676条2項の規定は、指定受取人の地位の相続による承継を定めるものでも、また、複数の保険金受取人がある場合に各人の取得する保険金請求権の割合を定めるものでもなく、指定受取人の法定相続人という地位に着目して保険金受取人となるべき者を定めるものであって、保険金支払理由の発生により原始的に保険金請求権を取得する複数の保険金受取人の間の権利の割合を決定するのは、民法427条の規定であるからである。

全財産を生命保険の保険料にぶち込んだらどうなる?

生命保険金に特有の性質をちゃんと理解して納得の申告を!

上記の記事でもお話したように、生命保険金は、受取人のモノです。

では、例えば、財産が預金10億円のみの方(推定相続人は長女D・二女E)が、その10億円で受取人を長女Dとする生命保険に加入し、その後、相続が発生した場合、長女Dは莫大な保険金を受け取ることになり、二女Eは(他に財産がないので)何も相続できない、ということになるのでしょうか?

このような場合には、相続人間の著しい不公平を是正するため、その保険金を相続財産として遺産分割の対象と取扱うことも考えられます(長女Dが実質的に保険金の一部を二女Eに渡す、ただし、そのまま渡すと贈与税課税されるリスクもある)。

出典:TAINS(Z999-5045)
最高裁平成16年(許)第11号遺産分割及び寄与分を定める処分審判に対する抗告審の変更決定に対する許可抗告事件(棄却)(一部抜粋加工)
死亡保険金請求権の取得のための費用である保険料は、被相続人Bが生前保険者に支払ったものであり、保険契約者である被相続人Bの死亡により保険金受取人である相続人に死亡保険金請求権が発生することなどにかんがみると、保険金受取人である相続人とその他の共同相続人との間に生ずる不公平が民法903条の趣旨に照らし到底是認することができないほどに著しいものであると評価すべき特段の事情が存する場合には、同条の類推適用により、当該死亡保険金請求権は特別受益に準じて持戻しの対象となると解するのが相当である

上記特段の事情の有無については、保険金の額、この額の遺産の総額に対する比率のほか、同居の有無、被相続人の介護等に対する貢献の度合いなどの保険金受取人である相続人及び他の共同相続人と被相続人との関係、各相続人の生活実態等の諸般の事情を総合考慮して判断すべきである。

想う相続税理士

いろいろなパターンについてお話しましたが、最終的には、保険契約に係る保険約款等が優先されますので、ご注意を。