【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

「余ったら自由に使っていい」は贈与にならない

相続税専門税理士の富山です。

今回は、夫婦間における生活費の余剰金の取扱いについて、お話します。

贈与はどうやったら成立する?

民法(一部抜粋)
(贈与)
第五百四十九条 贈与は、当事者の一方がある財産を無償で相手方に与える意思を表示し、相手方が受諾をすることによって、その効力を生ずる。

贈与は、贈与者(あげる人)が「あげますよ、使ってください」と伝え、受贈者(もらう人)が「ありがとう、使わせてもらいます」と了解することにより、成立します。

贈与が成立していないとどうなる?

生前に財産を贈与すれば、相続財産は減ります。

例えば、生前、夫が妻にお金を渡し、それが贈与として成立していて、贈与の時期が相続開始前3年以内に該当しないなど、生前贈与加算の対象になったりしなければ、夫の相続財産は減ります。

渡したお金は「妻のモノ」です。

しかし、お金を渡しても、それが贈与として成立していなければ、その渡したお金が妻の手元にあろうが、妻の名義の預金になっていようが、「夫のモノ」です(所有権が移転していないので)。

つまり、夫の相続財産として、相続税の課税対象になります。

夫が「生活費の余りは使っていい」と言っていた場合

民法(一部抜粋)
(書面によらない贈与の解除)
第五百五十条 書面によらない贈与は、各当事者が解除をすることができる。ただし、履行の終わった部分については、この限りでない。

民法上は、書面(贈与契約書等)がなくても贈与が成立しますが、税務署はそんなに甘くありません。

出典:TAINS(F0-3-312)(一部抜粋加工)
平19-04-11裁決・東裁(諸)平18-230
請求人は、本件預貯金等は被相続人から妻Aへ生活費等として生前贈与されたものを貯蓄して形成されたものであり、生活費の余剰金については、口頭による贈与契約があった旨主張する。しかしながら、①仮に被相続人が妻Aに生活費として処分を任せて渡していた金員があり、生活費の余剰分は自由に使ってよい旨言われていたとしても、渡された生活費の法的性質は夫婦共同生活の基金であって、余剰を妻A名義の預金等としたとしてもその法的性質は失われないと考えられるのであり、このような言辞が直ちに贈与契約を意味してその預金等の全額が妻Aの特有財産となるものとはいえないこと、②生活費の余剰金が妻Aに贈与されたことを具体的に明らかにする客観的証拠はないこと、③妻A等が述べる被相続人の性格からは、被相続人が妻Aに対し、生活費の余剰をすべて贈与したというのは不自然であることなどから、被相続人から妻Aへの生活費の余剰金の贈与を認めるに足りる証拠は見当たらないので、この点に関する請求人の主張には理由がない。

想う相続税理士

書面(贈与契約書等)があれば絶対に大丈夫(税務署に贈与を認めてもらえる)、というワケでもありませんので、ご注意を。

実態と形式のどちらの面からも疎明できる(税務署を納得させられる)ようにしておきましょう。