【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続放棄は詐害行為取消権の対象になる?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続放棄が詐害行為に該当するか(詐害行為取消権の対象になるか)ということについて、お話します。


相続税専門税理士に任せてスッキリ!
相続税専門税理士が直接対応
事前予約で土日祝日夜間対応可能
明確な料金体系+スピード対応
大手生命保険会社様で相続税・贈与税に関するセミナー講師の実績有(最近の実績:令和5年11月・令和5年12月・令和6年2月)

または はこちらから


詐害行為って何?

詐害行為とは、債務者が、意図的に自分の財産を減らすことで、債権者に財産が渡らない(債権者に弁済しない)ようにすることを言います。

例えば、借金があったり、借入の連帯保証人になっている場合に、自分の財産が差し押さえられないよう、財産を前もって子供に贈与したりするような行為のことを言います。

子供に自宅の土地建物を贈与して、子供の名義にしてしまえば、債権者に自宅を取られることがないかと言うと、そんなことはありません。

債権者には「詐害行為取消権」という権利があり、これを行使すれば、その贈与を取り消し、差し押さえることで、債権回収に充てようとすることができます。

民法(一部抜粋)
(詐害行為取消請求)
第四百二十四条 債権者は、債務者が債権者を害することを知ってした行為の取消しを裁判所に請求することができる。

遺産分割協議は詐害行為に該当する場合がある

相続人が合意すればどんな遺産分割協議でも通用する?

上記の記事でもお話しましたが、連帯保証人の方が「財産を相続すると連載保証債務の弁済に充てられてしまうので、自分が財産を全く相続しないような内容の遺産分割協議をしようと考えても、それが詐害行為に該当する場合があります。

それでは、財産を全く相続しないのは同じなのですが、相続放棄をした場合には、どうなるでしょうか?

相続放棄は詐害行為に該当しない

出典:TAINS(Z999-5168)(一部抜粋加工)
最高裁判所第二小法廷昭和47年(オ)第1194号詐害行為取消、株金等支払請求事件(棄却)(確定)
昭和49年9月20日判決

1 本件は、被相続人甲が代表取締役であった破産会社A社の破産管財人である上告人(控訴人・原告)が、亡甲の相続人である被上告人ら(被控訴人・被告)に対し、被上告人らが亡甲の相続について債務超過を理由として相続放棄をなしたことは、亡甲に対する債権者である破産会社を害する意思をもってなした詐害行為であるとして、相続放棄の無効等並びに亡甲の破産会社に対する債務金等の支払を求める事案である。
2 相続の放棄のような身分行為については、民法424条の詐害行為取消権行使の対象とならないと解するのが相当である。なんとなれば、右取消権行使の対象となる行為は、積極的に債務者の財産を減少させる行為であることを要し、消極的にその増加を妨げるにすぎないものを包含しないものと解するところ、相続の放棄は、相続人の意思からいっても、また法律上の効果からいっても、これを既得財産を積極的に減少させる行為というよりはむしろ消極的にその増加を妨げる行為にすぎないとみるのが、妥当である。また、相続の放棄のような身分行為については、他人の意思によってこれを強制すべきでないと解するところ、もし相続の放棄を詐害行為として取り消しうるものとすれば、相続人に対し相続の承認を強制することと同じ結果となり、その不当であることは明らかである
そうすると、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、その過程に所論の違法は認められない。論旨は、採用することができない。

上記の記事でもお話したように、遺産分割協議は法律行為であるため詐害行為取消権の対象となりますが、相続放棄は身分行為であるため、詐害行為取消権の対象にはなりません。

想う相続税理士

実質的には同じ「財産を全く相続しない」という行為でも、遺産分割協議と相続放棄で詐害行為取消権の対象になる、ならないの差が出ますので、ご注意を。