【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続の放棄をすると遺留分算定基礎財産は変化する

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続の放棄と遺留分の関係について、お話します。


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生前に多額の贈与があった場合

  1. 父が亡くなり、相続人は長男と次男の2人
  2. 父は、全財産を長男に相続させる、という遺言を残していた
  3. 相続財産(亡くなった時点の父の財産)は現預金2,000万円
  4. 父は、亡くなる2年前、次男に多額の生前贈与(相続時精算課税贈与)をしていた
  5. 次男に対する生前贈与は現預金1.8億円
というケースにおける遺産分けを考えてみます。

長男は、遺言で全財産を相続することができます。

しかし、その金額は2,000万円であり、次男はそれ以上の財産を生前に父からもらっています。

この場合、次男に対して1.8億円の生前贈与があったことにより、自分の遺留分が侵害されている、として、長男は遺留分侵害額の請求をすることができるのでしょうか?

民法(一部抜粋加工)
(遺留分を算定するための財産の価額)
第千四十三条 遺留分を算定するための財産の価額は、被相続人が相続開始の時において有した財産の価額にその贈与した財産の価額を加えた額から債務の全額を控除した額とする。
2 条件付きの権利又は存続期間の不確定な権利は、家庭裁判所が選任した鑑定人の評価に従って、その価格を定める。
第千四十四条 贈与は、相続開始前の一年間にしたものに限り、前条の規定によりその価額を算入する。当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与をしたときは、一年前の日より前にしたものについても、同様とする。
2 第九百四条の規定は、前項に規定する贈与の価額について準用する。
3 相続人に対する贈与についての第一項の規定の適用については、同項中「一年」とあるのは「十年」と、「価額」とあるのは「価額(婚姻若しくは養子縁組のため又は生計の資本として受けた贈与の価額に限る。)」とする。

次男は相続人ですから、相続開始前「十年」間の贈与が遺留分算定基礎財産に算入されます。

次男に対する生前贈与はこれに該当します。

2,000万円+1.8億円=2億円
のうち、長男の遺留分は
2億円×1/4(1/2×1/2)=5,000万円
ですので、遺言でもらえる2,000万円を控除した
3,000万円(=5,000万円△2,000万円)
を次男に請求することができる、ということになります。

相続の放棄をすると相続人ではなくなる

次男が相続の放棄をした場合にはどうなるでしょうか?

実は、遺留分算定基礎財産が変わります。

先ほどお話したように、相続人に対する贈与は「十年」間さかのぼりますが、

民法(一部抜粋)
(相続の放棄の効力)
第九百三十九条 相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす。

という取扱いにより、次男は相続人ではなくなりますので、「相続開始前の一年間にしたものに限り」の部分が適用されます。

次男に対する贈与は2年前ですから、「当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与」したのでない限り、遺留分算定基礎財産には算入されません。

この場合、長男は遺留分算定基礎財産(2,000万円)を全部取得しています(遺留分が侵害されていない)ので、次男に対して遺留分侵害額の請求をすることはできません。

相続の放棄をしても相続税の申告は必要

次男は、相続時精算課税により贈与を受けていますので、現預金1.8億円は相続税の課税対象となり、相続税の申告・納付が必要となります。

通常、相続財産の金額が2,000万円であれば、
遺産に係る基礎控除額:3,000万円+600万円×2人(法定相続人の数)=4,200万円
以下ですから、長男が取得した2,000万円には相続税はかからないのですが、次男の取得した1.8億円が相続税の課税対象になることにより、長男が取得した2,000万円にも相続税が課税されます。

想う相続税理士

次男は相続の放棄をしていますが、父の子供(一親等の血族)であることに変わりはないため、相続税額の2割加算(20%増し課税)の対象にもなりません。