【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税の基礎控除以下で相続登記を放置した後に相続人が死亡した数次相続の注意点

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続財産が遺産に係る基礎控除額(相続税の非課税枠)以下で、相続税がかからなかったため、不動産の名義書換えをせず、そのまま放置していたところ、相続人が亡くなった場合の対応について、お話します。


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相続税がかかれば遺産分けをするけれど・・・

人が亡くなった場合、必ず相続税の申告をしているかいうと、そんなことはありません。

国税庁発表の「令和3年分相続税の申告事績の概要」によれば、

令和3年分の課税割合は9.3%(※下記②÷①)です。
※①死亡者数(1,439,856人)・②相続税申告書提出に係る死亡者数(134,275人)

通常、相続税の申告をするのであれば、遺産分けをします。

相続税の申告には、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減など、取得者が決まっていないと受けられない特例があるからです。

取得者を決めるためには、遺産分けの話し合い(遺産分割協議)をする必要があります。

また、特例を受けないにしても、相続税がかかるのであれば、誰がどの財産を取得するのかを明確にし、その取得財産に応じて、多く財産を相続した方は相続税を多く支払い、少ない財産の方は少ない相続税を、という決まりをつけないとモメてしまいますよね。

ですから、相続税の申告をすることになれば、自然と遺産分けもちゃんとしよう、ということになるのです。

しかし、相続税の申告が不要という話になると、特に不動産については、「誰が相続するか決められないし・・・」「相続登記(土地建物の名義書換え)にはお金がかかるし・・・」ということで、そのまま放置されてしまうケースもあります。

数次相続は二次相続を見据えて一次相続の遺産分けをする

相続税専門税理士㊙カード1【数次相続・財産目録】

上記の記事にも書きましたが、相続後に、その相続に係る遺産分割協議をする前に、相続人が死亡することを「数次相続」と言います。

上記の記事では、最初の相続(一次相続)は相続税の申告が必要、という前提でお話を進めましたが、実は、一次相続で相続税がかからないような場合でも、遺産分けに注意すべき場合があります。

相続登記の費用のことばかりを考えない!

上記の記事と同じように、夫→妻の順に死亡したパターンを前提としてお話します。

一次相続で(夫が死亡した時に)妻が取得する財産が、二次相続の(妻が死亡した時の)相続財産を構成するのですが、相続登記の費用を少なくすることを考えると、夫が死亡した時に、不動産は子が相続した方がいい(妻が相続すると、夫→①→妻→②→子と2回分の費用がかかるから)という結論になります。

しかし、その不動産について、税金計算上の特例が受けられる可能性がある場合には、話は別です。

その不動産が夫婦のご自宅であり、子が別居しているケースでは、そのご自宅を売却する予定(可能性)がある場合には、一次相続で妻が相続すれば、二次相続後に子が売却する際、一定の要件を満たせば「相続空き家の特例」(所得税の特例)の適用を受けることができます。

「夫→子」と妻を飛ばして相続してしまうと、夫の相続時点では妻はそのご自宅にお住まいですから、相続空き家の特例の「相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと」という要件を満たさなくなってしまいます。

「夫→妻」と相続したご自宅であれば、妻が一人で住んでいた(他に居住していた人がいない)ご自宅(妻が亡くなれば「空き家」)になりますので、その後に子が相続して売却しても、その要件を満たします。

想う相続税理士

二次相続で相続税がかかりそうな場合には、一次相続で妻が子に代償分割金を支払い、妻の財産を減らすことも有効ですので、ご検討ください。