相続税専門税理士の富山です。
今回は、タワーマンションを既に所有している場合の対応策について、お話します。
タワーマンションを持っていたらダメ?
タワーマンション節税を認めない「総則6項」とは?上記の記事でもお話しましたが、タワーマンションについては、財産評価基本通達に定められている路線価方式での評価が否認される事例が出てきています。
では、既にタワーマンションを所有していて、今後、相続が予想される場合、どのように対応すればよいのでしょうか?
過去のいくつかの判決事例を見ると、基本的は、亡くなる直前または亡くなる数年前に購入して、相続直後に売却している、という例が多いです。
ですから、相続直後に売却をお考えの場合には、それが租税回避と税務署に見られるリスクがないか、検討しましょう。
実態のある居住用不動産への転換の検討
保有し続ける場合、そのタワーマンションに所有者やその親族等が住み、居住用のタワーマンションとして保有する、という場合には、リスクがかなり下がります。
そのタワーマンションに亡くなった方が住んでいたり、または、その亡くなった方と生計を一にする親族が住んでいたという場合には、取得者等の要件を満たせば、「小規模宅地等の特例」により330㎡まで8割引で評価することができます。
これは、相続人の生活基盤となっている居住用財産は、例えば相続税が払えないから売却しなければならない、なんてことになっても、実際には売却・換金が困難(住み慣れた家を出て、希望に合う新しく住む場所をすぐに探すのは大変)であることを考慮し、評価額の減額が認められているのです。
過去のタワーマンションに対する課税強化として、
- 居住用超高層建築物に係る固定資産税評価額の見直し
- 貸付事業用宅地等に係る相続税の小規模宅地等の特例の要件追加
①は固定資産税評価額の話であり、路線価方式で評価するタワーマンションの場合には、相続税評価には影響を及ぼしません。
②は相続直前に駆け込み的にタワーマンションを購入し、不動産賃貸を初めても特例の適用を認めない、とするものです。
想う相続税理士秘書
しかし、形だけの居住用財産ではダメです。
実際に住んでいる(住んでいた)ことが要件となりますから、生活の拠点としての居住用財産なのか、どういった経緯でその不動産を購入してそこに居住することになったのか等、経済合理性も含め、購入及び保有が合理的であると説明できるかどうか、検討しましょう。
下落すると大変
また、今後の価格の下落リスクについても注意が必要です。
タワーマンションとしての資産性が下落する場合に発生する納税リスクも認識しておく必要があります。
相続開始時点と、その後の税務調査で路線価方式による評価が否認された場合、そのタイムラグで大きな納税リスクを抱える可能性があります。
相続開始時点で財産評価基本通達上の評価額が2億円、実勢価格が10億円だったとします。
2億円の評価額で相続税の申告をし、その財産を所有していて、2年後に税務調査でその評価が否認され、10億円の評価額で申告し直さなければならなくなったとします。
この時、そのタワーマンションの実勢価格が4億円に下落していると、売却して納税資金を用意しても、10億円に対する相続税を用意できない可能性があります。
相続財産の評価時点は、あくまでも死亡日です。
修正申告提出日ではありません。
不動産の場合、近隣に新たな競合物件が建築されたりするリスクも考慮する必要があります。
タワーマンションの場合には眺望が一つの財産価値になっていますから、隣接する地域に新規物件が建設され、眺望が阻害されるような事態も予想されます。
また、タワーマンションを保有し続けるための経費(修繕積立金等)についてもきちんと認識しておきましょう。
想う相続税理士
買値に近い金額で売却できるというのは、それだけでかなりのメリットであることをお忘れなく。