【毎日更新】相続税専門税理士ブログ

相続税実務上の常識ともいえる預貯金等の帰属の考え方とは?

相続税専門税理士の富山です。

今回は、相続税申告における常識に言及した裁決事例について、お話します。


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通帳に書かれた名前をゴシゴシと消して書き直しても贈与にはならない

通常、相続税の申告をしようと思って(または、相続税がかかるかどうかを計算しようと思って)亡くなった方の財産を集計する場合、「亡くなった方の名前になっている財産」を集計しようとするハズです。

「そりゃそうでしょう。『亡くなった人の名前になっている財産=亡くなった人の財産』なんですから。」と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。

亡くなったAさんが「イ預金」「ロ預金」を持っていたとします。

どちらもAさん名義の預金です。

このうち、「ロ預金」を解約し、そのお金を、子供Bさんの名義で開設した「ハ預金」口座に入金したとします。

子供Bさんは、そんなことがあったなんて知りません。

この場合、「ハ預金(旧ロ預金)」についてはAさん名義の預金がBさん名義の預金に変わったのですから、AさんからBさんに贈与があった、ということになるのでしょうか?

そんなことはないですよね。

実質的には、「ロ預金」の通帳の名前(名義)が「Aさん」となっていたものを、ゴシゴシと消しゴムで消して「Bさん」と書き直しただけ(書き直した後の預金が「ハ預金」)みたいなモノです。

名前は変わっても(形式的な名前が変わっただけですから)、「ハ預金」はAさんのモノです。

このような預金を「名義預金」と言います。

「(亡くなった方以外の方の)名義(になっている)(でも亡くなった方のモノである)預金」です。

相続税の申告では、亡くなったAさん名義になっている「イ預金」だけでなく、「ハ預金」も申告する必要があります。

名義預金と名義預金じゃない預金はどうやって区別する?

「『ハ預金』については、Bさんの名前になっていてもBさんのモノじゃなくてAさんのモノとして取扱う、というのは分かった。でも、Bさん名義になっているモノの中には、本当にBさんのモノもあるのではないか?そういう預金と『ハ預金』のような名義預金はどう区別すればいいんだ?」と疑問に思われるかもしれません。

これについては、ある裁決で「常識」とされた判断方法があります。

出典:TAINS(F0-3-309)(一部抜粋)
平19-03-05裁決
預貯金等の帰属については、その資金源、預入れの経緯、印章の使用状況、入出金の管理状況及び名義変更等に伴う贈与税の申告状況等を総合勘案して判断するのが相当であり(相続税実務上の常識ともいえるものである。)

「ハ預金」については、

  1. 「資金源」はAさんである
  2. 「預入れ」はAさんが勝手にやっている
  3. 「印章の使用」はBさんが知らないということはAさんが使っている
  4. 「入出金の管理」はBさんが知らないんだからAさんがやっている
  5. 「贈与税の申告」は(していないかもしれないが)Bさんの名前でしていたとしてもBさんが知らないんだから贈与も成立しておらず(もらった人が知らないのに成立する贈与はあり得ません)、(贈与なんてないのに贈与があったことにして)Aさんが勝手に申告している

ということになり(総合勘案なので他の要素も検討する必要がありますが)、Aさんのモノ、ということになります。

Bさん名義の他の預金についても同様の方法で、名義預金なのか、名義預金ではないのか、を判断する必要があります。

想う相続税理士

これが「常識」ですから、「俺の名前になっているんだから俺のモノだろ。」なんて税務調査で言うと、「非常識」と思われてしまうリスクがありますので、ご注意を。