相続税専門税理士ブログ

隠ぺい仮装行為があった場合の修正申告における配偶者の税額軽減4パターン

相続税専門税理士の富山です。

今回は、隠ぺい仮装行為があった場合の配偶者の税額軽減の適用について、お話します。

隠ぺい仮装行為が発覚すると配偶者の特例が適用できなくなる

相続税の計算においては、「配偶者の税額軽減」という特例があり、配偶者が取得した財産については、「1億6,000万円」「配偶者の法定相続分相当額」のいずれか大きい金額まで、相続税がかかりません。

相続人が「配偶者」「子」の場合、配偶者の法定相続分は1/2ですから、1億6,000万円を超えても、財産の半分までは相続税がかからない、ということになります。

逆に言うと、どれだけ財産が多くても、半分しか財産を相続しなければ、相続税はかかりません。

50億円相続しても、全体の財産が100億円なら、相続税はかかりません。

残された配偶者の方の今後の生活保障や、配偶者が、亡くなった方の財産形成の最大の貢献者であること等を考慮し、税金計算上、大盤振る舞いしてもらえるワケですが、隠していた財産に対する相続税にまで、この特例の適用を認めてくれるほど、税務署は甘くありません。

配偶者の税額軽減(隠ぺい仮装行為有バージョン)は2回改正があった

隠ぺい仮装行為があった場合の配偶者の税額軽減の適用については、過去に2回の税制改正がありました。

平成6年度税制改正

①×②/③

①=相続税の総額
②=配偶者が取得した財産の金額(配偶者が取得した隠ぺい仮装財産を除く)
③=全体の財産の金額

平成19年度税制改正

①×②/③

①=相続税の総額(配偶者による隠ぺい仮装財産を除いて計算する)
②=配偶者が取得した財産の金額(配偶者が取得した隠ぺい仮装財産を除く)
③=全体の財産の金額(配偶者による隠ぺい仮装財産を除く)

税制改正のシミュレーション

当初申告

相続人:配偶者と長男の計2名
課税価格の合計額:5億円(配偶者2億5,000万円・長男2億5,000万円)
相続税の総額:1億5,210万円(配偶者7,605万円・長男7,605万円)
配偶者の相続税:①△②=0円
①=7,605万円
②=1億5,210万円×2億5,000万円(≧1億6,000万円)/5億円=7,605万円

想う相続税理士

半分しか相続していないので、相続税は0円です。

平成6年度税制改正ベース

配偶者または長男により隠ぺいされていた財産が1億円あり、それを長男が取得した

課税価格の合計額:6億円(配偶者2億5,000万円・長男3億5,000万円)
相続税の総額:1億9,710万円(配偶者8,212.5万円・長男1億1,497.5万円)
配偶者の相続税:①△②=0円←無傷
①=8,212.5万円
②=1億9,710万円×2億5,000万円(≧1億6,000万円)/6億円=8,212.5万円

相続税は超過累進税率です。

財産が多ければ多いほど、税率も高くなり、相続税もドンと増えます。

平成6年度税制改正ベースですと、隠ぺい仮装財産が追加されることにより、相続税が大幅に増加しても、配偶者の税額軽減を計算する上で、その大幅に増えた相続税を元に特例を計算するため、特例適用額も増加するので、隠ぺい仮装行為があったのに、配偶者がその財産を取得しなければ、配偶者は無傷(配偶者が隠していても無傷!)という結果になり、これが問題となっていました。

想う相続税理士秘書

平成19年度税制改正ベース(現在)

配偶者により隠ぺいされていた財産が1億円あり、それを長男が取得した

課税価格の合計額:6億円(配偶者2億5,000万円・長男3億5,000万円)
相続税の総額:1億9,710万円(配偶者8,212.5万円・長男1億1,497.5万円)
配偶者の相続税:①△②=607.5万円
①=8,212.5万円
②=1億5,210万円×2億5,000万円(≧1億6,000万円)/5億円=7,605万円

想う相続税理士

配偶者が隠ぺい仮装行為をすると、配偶者がその隠ぺい仮装財産を取得しなくても、配偶者の相続税が増えるようになりました。

長男により隠ぺいされていた財産が1億円あり、それを長男が取得した

課税価格の合計額:6億円(配偶者2億5,000万円・長男3億5,000万円)
相続税の総額:1億9,710万円(配偶者8,212.5万円・長男1億1,497.5万円)
配偶者の相続税:①△②=0円
①=8,212.5万円
②=1億9,710万円×2億5,000万円(≧1億6,000万円)/6億円=8,212.5万円

配偶者が隠ぺい仮装に全く関係していないため、ここは増税になりません。

想う相続税理士秘書

長男により隠ぺいされていた財産が1億円あり、それを配偶者が取得した

課税価格の合計額:6億円(配偶者3億5,000万円・長男2億5,000万円)
相続税の総額:1億9,710万円(配偶者1億1,497.5万円・長男8,212.5万円)
配偶者の相続税:①△②=3,285万円
①=1億1,497.5万円
②=1億9,710万円×2億5,000万円(≧1億6,000万円)/6億円=8,212.5万円

配偶者により隠ぺいされていた財産が1億円あり、それを配偶者が取得した

課税価格の合計額:6億円(配偶者3億5,000万円・長男2億5,000万円)
相続税の総額:1億9,710万円(配偶者1億1,497.5万円・長男8,212.5万円)
配偶者の相続税:①△②=5,160万円
①=1億1,497.5万円
②=1億5,210万円×2億5,000万円(≧1億6,000万円)/6億円=6,337.5万円

想う相続税理士

全体の財産が1億6,000万円以下でも、隠ぺい仮装財産については、配偶者が取得したとしても相続税が課税されてしまいますので、ご注意を。